ー 7話

 街の外に着くと、今まで気づかなかったのだが空は満天の星空で、大きな月が浮かんでいて、幻想的な草原が広がっている。例えるならば、映画のワンシーンのような金色に光る草原が続いている。

ユーマ「おぉ。むっちゃ綺麗だな。そういえばリアルと違って明るいから気づいてなかったけど、もうすぐ夜の9時じゃん。」

ユーマ「さてと、早めに終わらせて合流するために、説明されてあった薬草は.....。」

辺りを見渡しながら、白い花の咲いた丸い葉っぱをした植物を探す。

ユーマ「うぅん、これは葉っぱがトゲトゲしてるな。」

辺りには、似たような植物が咲いていてどれが薬草か一目では見分けにくい。

ユーマ「お、あったあった。これだな。」

そう言って茎を折ってしまわないように優しく触り、根っこから綺麗に抜く。

ユーマ「確か、薬草の取りすぎは良くないんだったよな。」

そう呟きながら、必要な量だけ引っこ抜いてから、土を掃ってインベントリーに仕舞う。

ユーマ「ふぅ、これで終わったし戻るか。」

そう言って振り向くと、近くに小さなウサギがこちらを見つめてキュィ?っと言いながら首を傾げている。

ユーマ「なんだこいつ。」

そう言いながら、そいつに手を伸ばした瞬間、ウサギの目の色が黄色から赤に変わり名前が表示される。

MoonEaterRabbit 直訳すると月喰らいのウサギ

俺は驚きながらそのウサギから手を離すと、思いっきり腹の方に突撃してきた。

ユーマ「痛ってぇ。」

よろめいて尻もちをついた俺は、HPが減ったという感じがして急いで立ち上がって、インベントリーからチュートリアルの時に使用した剣を取り出し、構えの姿勢を取る。そして、

ユーマ「逃げるが勝ち!」

そう言いながらダッシュで町の方に振り返って走っていく。

 攻撃されると思ったであろうウサギは、突進の姿勢を取りこちらを睨みながら待っていたのに、俺がそのままダッシュで逃げていくことに理解が追い付かずキュィ!?と言いながら首を傾げて相手が脱兎のごとく逃げていることに気が付き追いかけてくる。

 ウサギは、俺の方がこんな初心者じみたやつの足よりも速く、普段なら逃げるプレイヤーなんて追いつき背中に一発お見舞いしてから倒すはずだったのに、今回ばかりは、相手のその突発的な行動に理解が追い付かずに取り逃がしてしまう。

キュィィィィィイ!!!

満天の星空の下で金色に輝く野原の中、悔しい思いをしながら叫ぶそのウサギは、いつか絶対痛い目に合わせてやるという事を心に誓って、森の中へ戻って行った。

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