ー 6話
NPC「ようこそ、冒険者組合へ。ご用件わぁ~とっとっと.....何でしょうか?」
見た目12歳くらいの少女が大量の資料を持ってやってくる。
ユーマ「えっと、冒険者の登録をお願いしたいんですけど、大丈夫ですか?」
(資料で前が見えてないのでは.....)
と思いながらも、カウンターに勝手に入るわけにはいかないので、こけそうになりながらもトコトコとやってくる少女を心配しながら待つ。
NPC「はい、大丈夫ですよぉ。ふぅ、ご、ご登録ですね。」
大量の資料をカウンターにドン!と置き汗を拭う動作をするNPC(?)は、まるで生きている人間のように見える。
NPC「じっと見つめて、どうかなさいました?」
ユーマ「えっと、人間らしいなって思って。」
NPC「アハハ、何言ってるんですか、私は人じゃなくて土人ですよ。こう見えてベテランさんなのですよ!」
と、ドヤ顔をしながら腰に手を置いて胸を張る。
ユーマ「いや、そうじゃなくて....。」
と、聞き返そうとすると少女がそのまま話を進める。
NPC「えっと、えっと。こちらが資料で、こちらにご記入いただいてから、簡単な試験を行ってもらいクリアするとご登録が完了です。」
ひょこっと顔を出して背伸びをしながらカウンターに資料を置いてくれる。
ユーマ「あ、ありがとう。」
資料を手に取ると、目の前にウィンドウが出てきて、文字入力ができるようになる。
(えっと、何々......。注意事項と、名前と職業の入力、それから......。)
ユーマ「すみません。職業ってどんなのがあるんですか?」
NPC「そうですね。こんな感じでいろいろありますよ。後からでも変更は可能ですので、自分がしっくりくるなって思うのをまず選んでみるのはいかがですか?」
と言いながら、職業一覧と書かれた資料を渡してくれる。
ユーマ「う~ん、取り敢えずは剣士にしてっと、これで記入完了かな....。」
NPC「ご記入は終わりましたか?」
ユーマ「はい、終わりました。」
そう言いながら資料を渡すと、少々お待ちくださいね。と言って奥の方へ消えてしまった。
NPC「ユーマさん、こちらへどうぞ。」
5分くらいすると後ろから声が聞こえて、一瞬驚きながら振り返って下を見ると先ほどの少女がちょいちょいと服を引っ張りながら立っていた。
NPC「こっちですよ。」
そう言いながら、トコトコと進んで行く少女について行った先は大学の講義室のような場所にやってくる。
NPC「それでは、簡単な試験について説明しますね。」
そう言いながら教壇の近くに立つ少女の姿は、前からはほとんど見えていない事だろう。
ユーマ「えっと、いきなり試験とか言われても、俺このゲームについて知らない事だらけなんですけど。」
NPC「大丈夫ですよ。今からその簡単な試験の説明をするだけですので。」
NPC「なので、早く座って下さい。」
そう言いながら、少女は教壇の下から椅子を取り出してその上に立ち説明を始める。
講義室のような場所を見渡すと、俺以外にも多くの人が座って待っていた。俺は、邪魔になっていることに気が付いて急いで椅子に座る。
NPC「これが薬草です!今回は、これを取ってくるのが試験です。」
NPC「これが、モンスターです。」
NPC「危ないですよ。危険なんですよ!なので初心者の方は出会ったらすぐに逃げるんですよ!」
NPC「命あってのものなんですからね!」
と真剣に説明をしているのだが、見た目が全然怖くない先生の話は、プレイヤーには全く届かずほとんどの人は、カメラ機能にして写真や動画を撮ったり、掲示板を見たり、チャットをして話したり等して全く説明を聞いていない。
少し不憫に思いながらも、
(まぁゲームだし、ゲームの中でまで講義みたいなのを受けたくないよなぁなんて思ってしまう。)
(それにしてもカメラ機能にしてるやつ.....絶対ヤバいやつやな.....)
なんて事を思いながら話を15分くらい聞いていると講義が終わる。
NPC「ふぅ......皆さん、真剣に話を聞いて下さって嬉しいです。」
NPC「最後になりましたが、命大事に!ですよ。」
と言って、椅子の上から降りトコトコと歩いて講義室を出て行った。
(いや、皆話聞いてなかったですよ.....。)
なんて事を思って考えて見ると、
(そうか、NPCにはチャットもカメラ機能も見えてないのか。なんて不憫なんだ.....)
という真実に気づいてしまいさらに可哀そうに思えてくる。
(取り敢えず、薬草採取ね。その前に一度、リュウに会うか。)
と思いながら、他のプレイヤーと講義室を出ていく。
リュウ「お~い、これから試験か?」
そう言いながら手を振ってやってきたリュウは、俺に話しかけてくる。
ユーマ「おぉ、これから薬草採取。」
リュウ「頑張れよ!」
そう言いながら、ッグっと指を突き出して腹立つくらいの笑顔を俺に向けてくる。
ユーマ「お前は一緒に来てくれないのか?」
リュウ「それがよぉ、手伝ってやりたいのは山々なんだが、この試験ソロでやらなきゃいけないんだわ。しかも買ってきたやつだったり譲渡したやつだったりするのはダメらしいんだわ。」
そう言いながら、頭を掻いてから、
リュウ「だから頑張れよ!」
と言ってまた腹立つくらいの笑顔を俺に向けてくる。
ユーマ「了解、んじゃ終わったらチャットすればいいか?」
リュウ「おう、そうしてくれ。」
と言ってリュウはどっかへ行ってしまった。
ユーマ「確か、薬草採取がしやすい場所は、こっちだったよな。」
そう言いながら俺は、先ほどの講義で聞いたことを頼りに町の外へと向かう。
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