N.C.004 軍の解体
連邦政府は、すべての国に軍を解体するように通達を出した。
この通達によって非武装による真の意味での世界平和が成し遂げられることになる。
この通達は世界各地から称賛の声が上がっているが、その一方で連邦政府の権力が強まるのではないかという見方をする人もいる。
* * *
J国のとある反戦を掲げる団体の幹部は、この発表を自宅で聞いていた。
彼が所属する団体では、世界連邦が樹立される何十年も前から戦争をやめること、そして武装を解除するように訴え続けてきた。
つまりこの通達が出たことの報せは彼らの悲願が達成されたことに他ならないのだ。
彼らにとっての悲願が達成されたことはとても嬉しいのだが、彼には一つだけ悩みができていた。
それは今後どのような生活を送っていけばよいのかだ。
彼は既に還暦を迎えており、この団体での活動が彼にとってほぼ唯一ともいえる生き甲斐となっていた。しかし、その目標が達成されてしまったとなれば、これからどのように生きていくのかが分からなくなってしまっても無理はない。
しかし、そんなことを思っていたのは彼だけではなかったらしい。
彼の携帯がピコンと音を立て、メッセージが来たことを知らせた。そこに書かれていた内容は『これからの団体としての活動についての話し合いを明日急遽実施するので、その会議に参加できるかどうか教えてほしい』というものだった。
彼は参加する旨を綴った返信を書きながら、今後についてあれこれと思いを巡らせていた。
NEXT → N.C.088
世界の狭間にて 角野一樹 @sumino_k
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