第10話
14場
〇マンション・明里の自宅・居間・夜
修司、仏壇にお供えをし、リンを鳴らす
明里、勢いよく玄関の扉を開け帰宅
リビングに駆け込んでくる
後に続いて成田も入ってくる
明里「ただいま!」
修司「お帰り~どうしたのそんなに慌てて…(成田の存在に気が付く)って、明里ちゃんが彼氏連れてきたー!!!」
修司、ショックで倒れてしまう
明里「(倒れ行く修司に向かって)ちょっと! そういんじゃないから!」
明里、仏壇に向かう
成田「お父さん倒れてるけど大丈夫!?」
明里「大丈夫。そのままほっといて」
成田、修司を心配している
明里、仏壇に祭られた赤い石(石杵)を手に取る
明里「あった! これ、そうじゃない?」
成田、明里に近づく
成田「それだ! 博物館で見たのとそっくり!」
明里「よかったー(仏壇に向かって)おじいちゃんはおじいちゃんでなにかヒントを残そうとしてくれてたんだね。ありがとね。よし、じゃあ行こうか」
成田「うん! あ、お父さんは?」
明里「いいよ、ほっといて。起きたらややこしいし」
成田「そ、そう? じゃあ行くよ?」
玄関に向かう成田
明里「あ、ちょっとまって!」
成田、立ち止まり不思議そうにする
明里、自分の部屋へ行き、探し物をする
気絶した父と取り残される成田
修司が目を覚ましたらどうしようと落ち着かない
なかなか明里が帰ってこなくいてそわそわしている
明里、リビングへ戻ってくる
ホッとする成田
明里「これ、あげる」
明里、成田の手になにかを押し込み握らせる
キョトンとする成田
ゆっくり手を開くと明里が橋本にもらったお守り(延縁守り)の片割れであった
成田、お守りをまじまじとと眺めている
明里「(取り繕うように)ここまで付き合ってくれたお礼に。こんなんでごめんね」
成田「(嬉しそうに)ううん、ありがとう!」
成田、リュックにお守りつけ、王の墓に向かうべく玄関へ
明里「(ホッとしたように)これでやっと終わるんだ…これであいつに振り回されなくてもいいんだ。文字通りぜーんぶ忘れて…全部…」
寂しそうな表情になる明里
15場
〇西谷古墳(西谷墳墓群)・三号墓前(四隅突出型墳丘墓)・夜中
明里、墳丘墓前で妖を待っている
暗闇から妖が現れる
浮かない顔をしている明里の前へ
妖 「ここにいたか」
明里の手に握られている石杵を見つける
妖 「おーこれだこれだ。(明里の手から石杵を取る)懐かしい。そういえば、あの男はいるのか? いるならあいつも儀式に呼んでやろう」
明里はなにも答えない
妖、少し離れたところにいる成田を見つける
妖 「あぁあんなところに。おぉい、こっちだこっち」
妖の声に気が付き駆け寄ってくる成田
成田「こっちにいたんだ。探しちゃった」
妖 「お互い様だ。さ、行こうか。儀式は墓の上で行う」
成田「やっぱりこれまでの学説通り上で儀式が行われていたんだ! それどころか儀式の内容まで見れるなんて、これは世紀の大発見だ! 早く行こう!」
明里「(独り言のように)行きたくない…」
成田「え…?」
明里「もしあれがさ、本物じゃなかったらどうする?」
成田「どうしたのこんな時に?」
明里「あれが本物じゃなくて、台風が収まらなかったら?」
成田「その時はまた一から探そうよ。まだ時間もあるし、きっと間に合うって」
明里「(たっぷりと間をとって)じゃあ、もしあれが本物だったら?」
成田「本物だったらそれで良いんじゃない?」
明里、うつむいたまま喋らない
成田「どうしたの?」
明里「(意を決して)もし本物だったら、これでお別れだね」
成田「え?」
明里「(言葉を探すようにしながら)儀式が無事に成功したら、私たちもこれで最後。2度と会えないかもしれない」
成田「(困惑して)なにいってるの?」
明里「(堰を切ったように)儀式が成功したら、これに関する記憶は消されちゃうの。私たちが出会ってから今までの記憶がなにもかも…」
成田「(妖に向かって)本当なの?」
うなずく妖
妖、儀式の準備のため墳丘墓を登り始める
明里「嫌だ! 成田君と離れたくない! やっと! やっと出会えたのに…」
成田「あかりちゃん…大丈夫! 僕が必ず君を見つけるから! 記憶がなくなっても、あかりちゃんのことが分からなくなっても、必ず見つけ出すから! だから安心して。ね?」
明里「成田君…」
成田「さぁ、決着をつけよう」
明里「うん…」
儀式を執り行うため、墳丘墓を登り始める二人
登る二人の後姿
16場 エピローグ
上陸間近に迫っていた台風が温帯低気圧に変わったことを伝えるニュース映像
キャスター「上陸寸前だった前代未聞の超巨大は突如として温帯低気圧へと変わり、予想されていた雨も降らない地域が多いでしょう…」
〇島根市内の繁華街・ある程度人通りのある交差点・日中(1場と同じ場所)
街の音(特徴的な音/横断歩道?/駅の音?)(1場と同じ)が聞こえる
信号が青に変わり、成田と亀井、横断歩道を渡り始める。二人は何やら話している。成田のリュックには延縁守りが付いている
二人の反対側から明里が歩いてくる。明里の鞄には延縁守りが付いていて、手にはタピオカミルクティーを持っている
人混みの中、二人の距離は縮まっていく
すれ違う寸前、成田はチラリと明里を見るが、二人はすれ違っていく
亀井、興奮した様子で成田の肩を叩く
亀井「今の子めっちゃ可愛くなかった?」
交差点を歩く人々
終わり
戯曲『八雲さす』 マサキノブヒロ @koth1113
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