第26話エピローグ
コゼットらがこの世界から去って十数年後
浜辺で幼い子供を連れて歩くサクラと、同じ年頃の子供を連れて歩く有香がいた。
空は晴れ渡り、風はほぼない。4人が海岸にある人工的な石碑の前に歩み寄ると、海の遥か先が突然、光輝き始めた。ハルカは懐かしむような表情で光の方向を眺め、初めて見た光景に子供たちは驚いたようにはしゃぎ騒いだ。
「大丈夫、怖くないよ」
サクラは子どもらに優しく微笑んだ。
「サクラ!有香!こんにちは!」
彼女らの頭上から、見た目は少年に成長したウィリアムが笑顔で挨拶しながら降りてきた。
エルヴィラが創った赤子には彼の存在を忘れないようにと『ウィリアム』と名付けられ育てられていた。彼の魂が屋敷から消えたのち、数年して少年に成長した赤子にコゼットが『コゼット、また会えたね』と伝えられたことから少年にウィリアムの魂が彼を器にして宿っていたことがわかった。
蘇った彼は魔女に魂を触れられたことから魔法も宿されていた。
「魔法が体に定着しなくて不安定だけど、飛べるようになったんだよ」嬉しそうにサクラたちに伝える彼は、以前の彼とは違い年相応な明るい活発な少年へと成長していた。
「まったく、待てと言ったであろうが!妾でも追いつけない程の速さでは先が思いやられるぞ」
彼の後ろに数十年過ぎた時を感じさせないほど、可愛らしく美しいコゼットが寄り添っていた。
「ふふ。母様に似て魔法に愛されているなら、勝手に一人でも時空を越えられるようになってしまいそうですね」エルヴィラもユミも共に変わっていない
「お二人とも相変わらずに元気そうだね。ウィルも!」
サクラと有香は微笑みながらウィル達を迎えた。
少年ウィルの目には、以前の悲しみや痛みの影はなく、純粋な喜びが宿っていた。
コゼットは、この世界から消える前に石碑に自身の魔力を込めた。ハルカには石碑を通して彼女たちの世界と交信できるようにしていた。
彼女は石碑の魔力が消える頃には魔力を注ぐ為にと、定期的にハルカたちに会いに来ていたのだった。
「この海岸、覚えてる?ここでみんなを見送ったこんだよね」懐かしむようにハルカは笑った。
「そうだね、懐かしいね。あの日もこんなに晴れていた」有香が静かに答えると、サクラが幼い子供たちに目を向けた。
「この石碑はね、私たちの大切な人たちが見守ってくれている証なんだよ。だから怖くないんだ」
子供たちはその言葉に安心し、初めてみる家族らに再びはしゃぎ始めた。サクラと有香はそんな彼らの姿を見守りながら、過去と未来が交差するこの瞬間を静かに噛みしめていた。
「さあ、みんな、もう少し歩こうか」
全員は再び歩き出し、光輝く海を背景に、未来への希望を胸に抱きながら、穏やかな時間を共有した。
「みんな、元気そうで何よりだ」とヨゼフが言った。
「うん、ずっと石碑を通して見守ってくれていたんだね」とハルカが感謝の言葉を伝えた。
幼い子供たちは目を輝かせ、「この人たちは、おばあちゃんたち?」と尋ねた。
「そうよ。みんなの家族だよ」とサクラが答えた。
コゼットは優しく笑いながら、「これからもずっと、妾たちは家族じゃ」と言った。
夕陽が海を赤く染める中、彼らは再会の喜びを胸に、未来へと歩み続けた。
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魔女のコゼットは、この世界で愛を求めた @taiyakichn
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