The mystery of banana remains unsolved .―バナナの謎はまだ謎なのだぞ―

草加八幡次郎ボロ家@リア充爆発しろ

第1話 鐘のある店

 荒らされた店舗の中心には鐘が設置されている。特に意味はなく店主の趣味らしい。

 窓は割られ明らかに泥棒が入りましたという痕跡がコレでもかと残されてるのに何も盗まれてはいない。さしづめ店にカネがあるとでも聞いて勘違いした犯行グループが鐘を見てあほらし屋の鐘が鳴ってさっさとトンズラしたってところだろう。しかしこれを依頼主である店主に言うのは憚られる。この店がアホらし屋であると侮辱してるようにも聞こえるからだ。実際扱ってる商品は、石鹸やタオルといった粗品、缶ジュース、乾麺の詰め合わせなどのギフトや手土産、そう「つまらないものですが」と持っていくための本当につまらないモノばかり売っている店だ。間違っても名店お取り寄せグルメや山吹色のお菓子のようなネタ土産などはない、ガッチガチのつまらない物ばかりだ。

 依頼人の注文による推理はとっくに終わったがこの店の客層とかビジネスモデルの方が気になって仕方ない。どう見てもそう簡単に売れそうなものではないし、法人需要でもあるのだろうか?もしくは持ち込むと換金してくれる資金洗浄ルートとかそういうヤバい店なのかもしれない。だとしたら本当にカネもあるはずだ。しかし店にある現金は帳簿の売上ときっちり数字があっているという。


「あとは警察にお任せしたほうがいいんじゃないですか?正直ギブアップですね」


このポンコツ探偵が……!と怒ってるのがわかるのだが、おまんとこの趣味に付き合ってられん。こんなに真相究明する意味がないというか、真相など見りゃわかる。それ以上でもそれ以下でもない。


 帰りがけ、店舗の入口の隅に踏み潰されたかのようなきたならしいバナナの皮が落ちてることに気が付いた。一応この案件の片隅に記録しておこう。ケータイで写真を撮り事件ファイルの末尾に付け加えた。

 こういうナマモノは証拠保全が難しい。なぜなら時の経過とともに腐るからだ。

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