第9話 欲の大小と代償

 アリアは振り返ると、頭を下げた。

 随分と慣れ親しんだボロ小屋。いずれはあの隣に埋めてもらうのもいいかもしれない。そんな事を思った。


 ――森を出よう。


 方向は山頂から森を見下ろした時に決めていた。

 当初、アリシアとしての計画とは大きく違う。元々は一度森に入り姿をくらませた後、近くの村に潜伏してからこの領を出ることだった。しかしもうアリシアはいない。アリアは己の道を歩むしかない。領に戻りたいとは思わないし、戻っても余計な揉め事を引き起こすかもしれない。

 アリアに迷いはなかった。決断というにはもっと自然な、言うなれば成り行きに近かった。仮に戻るにしても、少なくとも今ではない。戦う力は手に入れたとはいえ、このまま領に戻るには自分の中に不足を感じた。今の自分には分からない何かを持って帰る必要がある。自由気ままな旅というと後ろめたさがある。少なくとも何かを探そうとするようなそんな旅。見つかるまではそれでいい。


(師匠も若い頃は武者修業の旅をしてたって言ってたし)


 数日歩くと、森を出た。

 何も無い草原をしばらく歩くと、やがて道を見つけた。何処に繋がっているのだろうと、道なりに進んでいく。そして、――どのくらい経っただろうか。

 遠くから気配がした。


 ――複数。争ってる。


 速度を上げ、視界に入るまで近づくと見えてきた。天幕のある馬車と、その周りにゴブリンと呼ばれる小鬼が見えた。馬のいななき。人間は男が一人、ゴブリンを追い払うように声を出し、槍を振り回している。

 アリアの目には明らかに劣勢に見えた。その人間がどういう人間かは分からないが、種族としての義理のようなものをアリアは感じた。歩幅を徐々に大きく、地面を強く蹴り、跳躍するように一気に寄った。


「――どうも」


 その場の全ての視線が集まる。


「ギャ、ギィッ」


 何らかの意味を持つであろう鳴き声を出し、アリアを指で指し示すゴブリン。

 指を向けられたアリアはその鳴き声に顔をしかめた。意味も大体分かった。


「酷い鳴き声」


 黙らせようと、一番近くの小鬼を蹴った。蹴られた小鬼上半身が歪み、すっ飛んでいく。地面を数度跳ねるように転がり、静かになった。二度と立ち上がりそうにないことは、確認するまでもないことだった。


「ギァ、ギァアッ!」


 生存本能に突き動かされ、ゴブリンたちは一目散に逃げていった。

 アリアは追わなかった。ゴブリンの生死になど興味はない。

 アリアは、肩で息をしている男に近づくと気をつかった。


「大丈夫ですか?」


 三十くらいの男だった。体格や雰囲気から察するに荒ごとに慣れてる感じではない。男は息を整えると、アリアから敵意を感じれないことを確認し、頭を下げた。


「――ありがとうございます。謝礼はしっかりいたします」

「いえ、別に――」


 断ろうと思ったアリアだったが、よく考えれば持ち合わせがない。男は察した。


「――で、どうでしょう?」


 男は多めの額を言った。

 アリアは見当が付いた。


「行商人の方ですか?」

「はい。と言いましても、儲けているわけでもないのですけど」

「儲からないんですか?」

「いやまぁ、そういうわけでもないのですけど」


 煮えきらない態度。どうやらあまり聞かれたくないことであると推測できた。


「なるほど、なにか事情があったようで。申し訳ありません、実はこの辺りには来たばかりで」


 アリアはそう言って謝罪することで、情報を得ようとした。


「ああ、そうだったんですね。……せっかく来た人に言うのもあれですが、この辺りには長居しないことをおすすめします」


 首を傾げるアリア。


「何かあるんですか?」

「……数年前くらいから、この辺りは色々と荒れてましてね。昔はこの辺にゴブリンが出ることなんて少なかったんですが、今では討伐隊も編成されなくなってこの有り様です。そして何より、どこもかしこも治安がよくありません」

「衛兵に何か問題が?」

「……あまり言えないことです。――勘弁ください」

「ああ、大丈夫です。問題なんて路傍の石くらい転がっているものです」


 自分も苦労していると言うと不愉快になるが、深刻さを軽減するように言うと受け入れやすい。ユーモアはコミュニケーションを円滑にする。


「どこを見ても石ばかりで見飽きそうですよ。せめて道の上の石でも取り除こうと傭兵を雇ったのですが、前金だけ持って逃げられこの始末です。とはいっても、こうやって助けも来るのですから世の中まだ捨てたものじゃありませんけどね」


 アリアは同行することで、何やらあれこれ知ってそうな行商人から情報を仕入れることに決めた。見立てではただの行商人ではない。

 アリアは邪気のない笑みを浮かべた。

 アリアは自分がどう見られるかをよく知っている。笑顔で警戒心を殺し、あれこれと聞いていく。男はすっかりとほだされ、やがて自分の娘を心配するような態度になっていた。


「――というようなわけだから、兵士の前ではよく気をつけてるんだよ」


 少しすると、口調も娘に対するようなものに変わっていた。


「その兵士と何かあった時はどうすればいいんでしょう?」


 男は渋い顔をした。


「逃げる、もしくは……いや今はよそう」


 言いづらそうに続ける。


「……昔は自慢の騎士様も、今じゃただの賊もどきだ」


 滲む憤り。


 ――さて、どうするか。


 トラブルに巻き込まれる可能性を考えるなら、この男と関わるのは程々にしていた方がいい。どんな事情があるかは知らないが、人のあれこれに首を突っ込む気はない。

 アリアは男を観察するようにして視線をやると、男は何かを堪らえるような表情をしているのが見えた。

 嘆いている様子ではない。そこには何かしらの行動を実際に起こしている人間のそれがあった。前に向かって歩いている人間は美しいが、付き合って損するのは御免である。関わりすぎないようにする必要がありそうだった。


「――そろそろです。一応、馬車の中に入っておいてください」

「はい」


 馬車が村に入ると、迎え入れるような声が聞こえた。だが声に少しだけ陰りがある。馬車の中のアリアは外の会話に耳を澄ませた。


「無事だったか?」

「ええ、不運と幸運の巡り合わせのおかげでなんとかですがね」


 馬車の動きが止まる。

 馬車の中へ入って来た村人たちと、アリアが遭遇した。


「どうも――」


 アリアはとりあえず挨拶をした。


「え、あぁ――」


 村人たちはまさか中に人がいると思わなかったらしく驚いていた。が、行動を止めずに、りんごが乗った少し大きな木箱を重そうに持ち上げると、そのまま運び出して行った。


(随分と重そうだ)


 りんごの木箱は確かに軽くはないだろうが、それにしても大の大人四人がかりで持ち運んであそこまで辛そうな顔をするだろうか。りんごの下に何が入っていたのか、アリアは何となく想像がついた。


(刀槍の類かな)


 外から、村人と商人との会話が聞こえてくる。


「話は後だ。あいつらが来てる」

「なんだ結局、運が悪かったのか」

「急ぐぞ」

「ああ」


 自分はいつまでここで待機していればいいのかと悩むアリアだったが、別にやることもないのでそのまま待つことにした。

 待っていると、馬車の外から威圧的な声が聞こえてきた。


「――おい、そこの!」


 アリアはバレないように外を覗くと、兵士の鎧を装備した二人の男が行商人の男に詰め寄っている姿が見えた。


「何をしている!」


 行商人の男は腰を低くした。


「はい、何でございましょう? 何かお目当てのものでも?」

「中を改めるぞ」


 そう言った兵士は視線だけで馬車を指した。


「中ですか? 構いませんが、理由をお聞かせ願えないでしょうか?」

「説明する必要がどこにある」


 兵士はズカズカと馬車の中に入ると、兵士とアリアの目が合った。


「何だお前は――」

「旅の途中で乗せてもらった者です」

「出ろ。邪魔だ」


 アリアが立ち上がって、馬車から出ようとすれ違った辺りで、腕を掴まれた。


「おい、返事がないぞ」

「返事というのは?」

「……お前も後で話を聞くからな」


 じっと身体を見られた。視線から察せられたものに、アリアの不快指数が跳ね上がった。


「ほら早く出ろ――」


 背中を押された。

 アリアは返事をせずに馬車から出た。

 そのまま行商人の男のところまで行くと、


「……大丈夫ですか?」


 中に届かないように小声でそう言われた。目が合うと、すまなそうに目を伏せたので、アリアは何ともないと示すように笑みを見せて誤魔化した。やる事は決めた。ただ実行出来るかどうか、それを決めるのは自分ではない。願うしかなかった。

 アリアはすぐに行動に移した。


「面倒な事になりそうなので、このまま村から出ることにします」


 そう言うと、周囲の空気が数秒止まった。

 村人の一人が言う。


「いや、もうすぐ夜だ。危険だし止めたほうがいい。魔物もそうだが、盗賊まがいの者も多い。まだこの村にいた方が安心だと思うが」


 アリアは確信に至っていた。


「人間というのは正直な生き物ですが、願望をそのまま表に出すのを厭う生き物でもあります。私の願望と、皆さんの願望は違っています。そして、皆さんの願望に対して、私が従う理由が提示されていません」


 アリアは笑って見せた。


「見ず知らずの私より、大事なものが皆さんにはあるんじゃないですか? 互いの利を取るべきです」


 いくつかの息を呑む音。勘の良い者は気づいた。


「君は――」


 アリアは人指し指を唇に当てて、今までの純朴な笑みではない意味深な笑みを見せた。


「お互い何も知らなかった。――そうしませんか?」


 村人の中で頷く者がいるのを確認すると、アリアは足を進めた。見送る村人たちはその背中を見ると、不安が立ち上がってくるのを抑えきれなかった。バレた。もしくはバレていた。これは偶然か、それとも必然か。馬車から運び出した食材が乗った木箱には、食材の下には武器が隠されていた。すぐに地下に運び込んだおかげで兵士にはバレていない。だが、知っている存在が手元から離れていこうとしている。どうするべきか。村人たちは迷った。




 ◇◆◇




 国がある。王がいて、貴族がいる。貴族は爵位だけではなく、領地も持っている。この辺りはとある貴族の領地だった。数年前までのことだが。

 今ではよく知らない軍人がいきなり領主になった。森の向こうの地域で、功績を上げたとか何とかで大抜擢らしい。それまでこの地を治めていた領主が亡くなったばかりでちょうど良かったとのこと。当初、領民は誰しも訝しんだが、今では恨みや憎悪を持ってこの状況を睨んでいる。多くの血が流れた。流れた血が火を点け、反乱が起こった。さらに多く血が流れた。そして流れた血の多さに溺死するように、生き残った者たちがゆるやかに沈んでいっていた。

 行動しても行動しなくても死が待っていた。

 やがて、領民たちは生き方より死に方を考えるようになっていた。

 反乱を起こして成功させることが目的ではない。ただ意地を見せる。己の脳みそを相手の腐れ面に叩きつけて死んでやるという気概で動いていた。

 そんな時にやってきたのがアリアだった。当然部外者である。遣われる気は少ない。己から死を選ぶという選択した村人たちが、急にやってきた見ず知らずの少女に配慮する理由などありはしない。

 おそらくはあの少女は死ぬか、それに近い目に合うだろうと思っていながらも、これ以上は止めなかった。

 やがて兵たちが馬車から出てきた。


「とりあえずは怪しいものは見つからなかったが、まだ終わってはいない。調べるところはまだいくらでもあるからな」


 馬車から降りてくるや、兵はそのようなことを言った。その仕事ぶりが、忠誠心から来るものではないことは誰もが分かっている。何か見つければそれをつかって脅して金品を要求するのだ。またその上で、上に報告して報奨金も手に入れる算段も付けれる。何も見つけれなかったとしても、不当な報告を恐れた村は、嫌々であろうと歓待するしかない。兵たちにとっては美味しい役目だった。

 少しすると日が沈み、明かりが必要な頃になった。

 村人はこれ以上探られたくないと、ぎこちない笑みで言う。


「そろそろ食事でもどうでしょう? 酒も用意しております」

「ふむ」


 これもまた慣例である。兵士の二人は顔を見合わせた。


「――いや、まだいい。それより用事がある」

「用事、ですか」


 背筋の凍る想いだった。一体何を考えているのか。己の思うまま振舞うことに慣れた人間がどういうものであるか、この領地の民はよく知っている。ロクでもない。それだけは確実だった。


「そのような顔する必要はない。少し村を出るだけだ。お前たちには関係のないことだ」


 ほっとした村人たちだったが、そのまま安心までするほど安全な世を生きていない。不穏な予感を正確に感じとった。


「……その用事というのを伺っても?」

「この村の人間には関係のないことだと言ったはずだ」


 関係ない。その言葉が、予感が当たっていることを気づかせた。


「し、しかし用意した食事が冷めてしまいますが――」

「ああ、それは残念だが仕方がない。これも仕事だ」


 そう言う兵士の顔には欲が浮かんでいる。

 村人たちは渋面を表に出さないように苦慮した。

 食料には限りがある。無駄に出来るものなどない。もったいない話である。兵士たちに用意した食事は、兵士たち以外には食べさせることが出来ない代物である。食べればそのまま朝まで目を覚まさない隠し味入りだった。


「――とにかく、我らは行く。こう月が明るければ時間はかからんだろう」


 駆け足で馬舎に向かうと、馬に乗って行った。

 村人たちはその背中を不安げに見送った。

 これで本当にいいのだろうか。不安はそこにあった。我々は正義ではないのか。そんな想いがあった。村人たちは自分たちが正義だと思っていたかった。

 不安が口に出る。


「……どうする?」

「一応、行った方がいいんじゃないか」

「だが、それで――」


 村人たちが相談し合う中、行商人の男が覚悟を決めた声色で言った。


「私は行きます。命の恩人に報いる必要が私にはある。もし助けられなくても、一緒に死んであげることくらいは出来ます」

「あんた……」


 人は利益のために動く。ここでの利益は何もしないことである。兵士たちがあの少女が去ったことを知っているということは、会話を聞かれていたということである。分かりやすい話はしていないが、怪しい会話はしている。


 ――兵士の機嫌を取るべきだ。


 誰もがそう思った。

 だが、人は利益のためだけにしか動かないわけではない。時にはそれに反したこともする。例えば、成功しないことも、死ぬことも分かっていながら反乱を起こしてやろうなんてことは普通やろうとしない。


「……村の外なら、言い訳出来なくもないんじゃないか?」

「そうだ。少人数なら兵士だって賊に襲われるんだし。魔物もいる」

「だとしたら俺たちは悩みすぎた。急がないと――」

「行こう」


 兵たちに遅れて、村人たちも発った。




 ◇◆◇




 夜道を行くアリアは鼻歌を歌っていた。夜の空気は相変わらず心地が良い。


(悪行には違いない)


 それでも決めるのは向こうだ。でも、そのこと自体を決めたのは自分自身。そして望んだのも自分。


「いたぞ! あの女だ!」


 馬の走る音に、粗野な声。


「止まれ!!」


 振り返ったアリアは、まるで受付嬢のような丁寧さで聞いた。


「これは兵士様。どうかなさいましたか?」


 兵士の一人が馬上から言う。


「動くなよ。下手に動けば、――これだ」


 剣を抜いて、首を斬るような仕草を見せた。もう一人の兵士はアリアが逃げないようにと回り込む。


「その、私はお金は持っていなくて……」


 不安そうに言うアリア。兵士は癇に障った様子で言った。


「何だと? 我らが賊に見えたと言うか。――なんと失礼なやつだ。これは少し教えてやる必要がありそうだな」

「いや待て、それより怪しい物を持っているかもしれんぞ」

「ああ、それもそうだな」


 アリアの肢体を、容姿を舐めるようにして見る。月明かりの薄暗い中でも分かる。これは今まで見たことがない程の極上のもの。最大限に味わう為にどうすればいいか。


「確認するぞ」


 何事も過ぎるのは良くない。欲をかき過ぎれば破滅するし、命を落とすこともある。時間だってそうで、早過ぎても遅過ぎても良くない。

 動揺を見せないアリアに、兵たちは不安を覚えた。

 望んだものでも、手に入るまで時間がかかってしまえば、興味が無くなることがある。望んでいたのは、求めていたのは、兵たちだけではなかった。


(始まる前に飽きてきたな)


 元より執着などない。早く終わらせてしまおう。アリアは決めた。ずっとじれったかった。


「……馬に乗ったままなのって、失礼じゃないですか?」

「あ?」

「もしかして、上から見てないと女の子に舐められるじゃないかって不安だったり?」


 兵士たちの瞳孔が大きく開く。無言で馬から下りると、歩み寄る。頭の中は愛や慈しみなんて微塵もなく、暴虐と我欲で溢れていた。

 だがその暴虐も我欲も足りていなかった。眼の前の存在に比べたらまったくと言っていいほどに。まさか、不快な視線を送られたからといって、触れられたからといって、気分良く殺す口実を探していたとは思いもしていなかった。そもそも悪意をぶつけられたら殺す以外の方法を習っていない。アリアは真面目だった。


「それでは、さようなら――」


 手を伸ばし、兵の側頭部に手をかける。

 同時に反対の手を肩に手をかけると、ぐっと引き寄せて首に負荷をかける。


「がっ――」


 首から鈍い音が鳴り、その異変に馬が逃げていく。アリアは倒れゆく兵士の腰から剣を抜き取ると、


「――どうする?」


 残った一人に突き付けた。剣を突きつけられた兵士の顔には恐怖が現れていた。


「何か言ったら?」


 腰を抜かしたのか、兵士は尻もちをついた。

 その心が折れる速さにアリアは呆れた。


「……せめて何か言ったら?」


 返事はない。

 焦れた。


「ねえ、どうやって死にたい?」

「……な、なんで、こんな」


 かったるくてため息が出た。


「……見逃してくれ」

「それは嫌」


 男は地面に叩きつけるように頭を下げた。


「何でも言うことを聞くっ、だからっ」

「じゃあ、そのままの体勢でいて。――首が落としやすいから」

「え」


 ぼとりと、地面が何かを受け止めた音が鳴った。


「はぁ」


 感慨は無い。もう少し良い気分になれると思っていたけれど、刹那的快楽を堪能するには相手が軽すぎた。


(塵のようなやつめ)


 動かぬ物体と化したものを見下すと、鼻を鳴らした。思えばどうしてこんなつまらないもので楽しもうと思ったのか。


「――いたぞ! 無事かっ!」


 村人らが駆けつけてきた。

 村人たちは、この光景を見てすぐに、何があったのかをを理解した。


「まさか、こんなことが……」


 状況に驚く一同に、アリアは分かりやすく説明してみせた。


「この辺りではゴブリンがよく出没するそうですね」


 そう言う手には、血が滴る剣。

 言い終わると同時に、ゴミのように投げ捨てた。


「汚れちゃったんで、綺麗にしたいんですけどいいですか? あと服とか融通していただけると」

「――分かった。とにかく一度村に戻ろう。それの処理もある」


 村人から不安や懸念が消え去った。味方かどうかは分からないが、少なくとも敵ではない。おかげで話したいことも出来た。

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