フライドチキン

まほろ

フライドチキン

心臓を唐揚げにする音がしたセミとコーラと君と8月


パクチーは代わりに全部食ってやる君が君でも君じゃなくても


得意気に七角形の星を書く君の心の形も知らず


夏空にタンポポを摘む無邪気さで壊したガラス細工の小鳥


青空にたなびくクモの糸光る夜の名残が滲む靴音


二杯目の冷めた紅茶をかき混ぜる真昼の空に透けた満月


逆光に潮風色のスプレーで君が画いた夢は虹色


星空を映して蝶の羽は舞うアスファルトには銀色の雨


人波にほどけた指じゃ触れない人魚の鱗鏤めた空


夜色の波間を泳ぐ白魚の鱗が描く仮初の星


ため息で夜の鏡を曇らせて寄り添う影は二つの孤独


藍色の冷たい壁の夜は明けて背中に残る紅い三日月


雨の日も月が綺麗と君は言う同じ仕草で夜が始まる


風の夜は砂漠の月も目を閉じる蠍の針はハートの形


クリスマスキャンドルの灯は100V翼を捜すフライドチキン


夜に咲く砂漠の薔薇を掴まえて朝焼け色に染まる左手


真夜中の背中に香る沈丁花記憶の君は振り向きもせず


弓月を静かに洗う春の雨君を忘れた夢の隣で


どうやって涙を拭こういつの日も左手に薔薇右手にはパン


空き瓶に誰かが挿した蓮華草いつかの君と同じ仕草で

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フライドチキン まほろ @mahoro_

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