東1局8本場

 ここから先は月花のペースだった。月花は麻雀をする際の流れと調子を把握出来ていた。


 相手が弱ってきた段階で徹底的に追い詰め、徹底的にあがっていく。それが麻雀で勝ちを得る方法だ。


 最初からイーシャンテンなのに中々テンパイの形にならないナリネコは焦る。牌を無駄に切っていくうちに月花はロンあがり。


「それ、ロン」


 役は白、中、ドラ1の3900点。これだけの損失でもナリネコは焦る。


 次第に月花はツモとロンあがりを繰り返していき、オーラスでナリネコがリーチをかけたら、月花がポンと鳴く。


「そこでポンなのか?」


 リャンソーポンから3巡後、月花はリャンソーカン。


 ドラも増えるがナリネコは逆転可能と見る。しかしあたり牌を引かない。リーチしているため引いた牌は捨てなければいけない。引いた牌を捨てた時、それは月花のあたり牌だった。


「ロン。対々和、三暗刻、ドラ4。親の倍満」


 これによりナリネコはトビで終了。彼女は意気消沈してしまった。それだけならまだしもここで手を緩めないのが月花だった。


「どうしたの……ナリネコさん? まだ私……負けてない……」


 困った顔をしながらも内心は挑発している月花。


 さらにナリネコは幽霊に激励される。


「まだだって。ここからここから。あの子が偶然いい牌に恵まれただけだって。席を変えてまた半荘やれば次は勝てるよ」


「そうだな。ああ、やるよ。今度は私の勝ち確定だ!」


 席替えを行って今度は東家に幽霊、南家に天狗、西家に月花、北家にナリネコが座る。


 東1局。ドラはイーピン。ナリネコはイーピンを2枚持っている。とはいえ、それ以外の牌はバラバラ。これをどうにかしたいと思っていた。


 15巡目となっても誰もドラを捨てない。使い物にならないだろうと思ったナリネコはドラのイーピンを捨てる。すると月花がポンと発声する。


「それポン……」


 これにナリネコは驚く。そしてまた牌を引く順番がナリネコになる。


 とはいえこの月花のポンにナリネコは焦らない。イーピンの場合はタンヤオが成立しないため、安心して牌は切れる。ナリネコは四萬を引いたが月花の捨て牌を見ても萬子が多く捨てられていることやイーピンをポンしていることから筒子待ちの清一色狙いだろうとナリネコは思っており、簡単に四萬を捨てる。


 しかしそれが仇だった。月花がロン発言して牌を倒す。


「ロン……中ドラ3で満貫」


 町は四、七の萬子待ちだった。


 ナリネコは悔しがって8000点の点棒を月花に渡す。


 そこから先は月花によって速いあがりを繰り返され、この半荘もナリネコは月花に負けた。

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月花 ‐Gekka‐ 怪奇あふれる時代の奇才の麻雀伝説 長尾水香 @nobusige11

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