東1局7本場

 ナリネコはドラを増やすためにカンを行ったが結果的にこれが墓穴だった。


 ナリネコの捨て牌。サンピン。これが月花のあたり牌だった。


「ナリネコさん。それだよ……」


「どういうこと?」


「ロン……」


 月花はゆっくりと牌を倒し、その役を見せる。それはリャンピン4枚にイーピン1枚。スーピンの暗刻チーピン暗刻。そしてチューピンの対子。


 この役にナリネコは驚いた。何しろこれでリーチと筒子の清一色が成立。


 清一色は鳴けば5飜だが、鳴かなければ6飜となる。一発はナリネコのカンで消えたものの、7飜で跳満以上は確定。それだけではなく、そのナリネコのカンのせいでドラを増やしてしまったことが最大の墓穴になる。月花はリーチであがったことで裏ドラをめくれる。


 しかもカンで裏ドラは3つめくれるため、裏ドラだけで結構な飜となる可能性がある。


 幸い表のドラに筒子がなかったが、裏ドラを月花がめくった瞬間にナリネコと天狗と幽霊は仰天することになる。もちろんこれには後ろで見ていた店長や青葉も仰天した。


 裏ドラにイーピンとパーピンがあり、これにより裏ドラ6つ。7飜とあわせれば合計13飜。


 数え役満確定であった。


 数え役満は13飜以上で成立する役満と同等のあがりで、月花はこの数え役満を親であがったため、ナリネコからとれる点棒は48000点。逆転1位でナリネコをとばしての勝利だった。


 トビ終了ありのこの半荘でまさかナリネコはトップだったにも関わらず、こんな形で負けるなんて思ってもいなかった。


 何しろ月花の待ちはサンピン単騎待ち。あがれる可能性は低い。


 しかもリャンピンが4枚あったのにもかかわらずカンもせず効率の悪い待ちで清一色をあがったのだ。明らかにシロートのやり方にしかナリネコは見えなかった。


 そのため、ナリネコは月花に怒鳴り散らす。


「小娘! なんだその待ちは? イーピン抜いて他で待てば四暗刻で確実に役満だっただろうが! それをそんな待ちであがって数え役満だと! ふざけてる! 万が一ドラが乗らなかったらどうするんだ!」


「ドラなんて期待しても……どうしようも……ない」


「なんだと! じゃあなんでそんなあがりで! 意味不明だ!」


「でも……この形であがらないと……逆転出来なさそうだったし。それに役満なんて……待っていられない……」


 困り顔で口数の少ない感じで話す月花にナリネコはムカついてしまい、右手の爪で月花をひっかこうとするがそれを幽霊はとめる。


「ナリちゃん。それはだめだって。負けを認めよう」


 しかし、ここで月花が話し出す。


「負けを認められない? じゃあ……私が負けるまで……やろう……」


 これにナリネコは望むところだとばかりに再び半荘の麻雀をすることになった。

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