第2話 5年後。秋桜の丘で永遠の愛を君に〜全ての始まりとおまけの話
5年前。私は
その頃の私は子どもで、結婚は愛し合っている者同士がするものだと信じていた。
だから青年が女性に向かって片膝をついて永遠の愛を誓って求婚し、女性が私も貴方を愛しているから凄く嬉しいと泣きながら言った時、私はてっきり彼女は彼の求婚を受け入れると思っていた。
だけど女性は自分達の身分差やお互いの家の後継者問題を理由に青年に別れを告げた。
「ごめんなさい。どうか私のことは忘れて幸せになって」
去っていく女性を見つめ涙する青年が物凄く悲しそうだったから、私は元気を出してと彼に言いたくなったのだけど、突然どこからか飛んできたゴムボールが彼の頭を直撃して彼が倒れてしまったものだから私は声をかけることが出来なかった。
「ここが主人公がヒロインに永遠の愛を誓う場所か。綺麗な場所だな。……しかしボールはどこだろう?小説の聖地巡礼がしたくてピクニックを強請って連れてきて貰ったのにボールを失くしたら怒られちゃう。……あった!良かった、これで間抜けと言われなくて済むぞ」
少ししてボールを探しに現れたのは子爵家の四男だった。
青年が花の中へ倒れた後にやってきたからか、彼は青年にボールをぶつけたことも知らずに見つけたボールを抱えて帰っていった。
彼がいなくなった後、私は青年がどうなったのか確かめようと見れば、青年はいつの間にか立ち上がっていて頭に手をやりながら辺りを見回していた。
「あれ?ここはもしや小説の?……そうだとしても僕には他の女性と政略結婚なんて無理だ。たとえ何をしても僕は必ず彼女を取り戻す」
夜の色に染まりつつある空をひと睨みし、そう呟いた青年はもう泣いてはいなかった。
あれから5年。
家に内緒で食堂で働いている私は店の常連客である子爵家四男から、先日見合いをしたが大失態を犯して実家から放逐された話を聞く中で、あの恋人達が5年越しでついに結ばれたことを知った。
「俺はどうして肝心なときにヘマしてしまったんだろう」
「騎士の仕事で遅刻や失敗したことは一度もないんでしょう?なら、その人とは縁がなかっただけよ」
「いつも君は優しいよね。好きになりそう」
頬を染めて私を見る彼に微笑みを向ける。やっと彼が私を見てくれた。
彼は平民になった。ならば私もあの青年と政略結婚させようとした実家を出よう。
だって私は今も結婚は愛し合っている者同士がするものだと信じているから。
5年後。秋桜の丘で永遠の愛を君に 三角ケイ @sannkakukei
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