5年後。秋桜の丘で永遠の愛を君に
三角ケイ
第1話 5年後。秋桜の丘で永遠の愛を君に
5年前。
私も彼を愛してた。でも彼は侯爵家の一人息子、私は子爵家の一人娘。
身分差やお互いの家の後継者問題を思うと諾とは言えなかった。私は彼から離れるため親が勧める見合いを受けることにした。
「君を愛することはない!」
屋敷に来るなり挨拶も約束の時間を遅刻してきたことの謝罪もなく、暴言を吐いた男は今回の見合い相手だった。
子爵家同士の見合いだが私は跡取りの一人娘で男は入り婿希望の四男。
失礼な男に私の両親は激怒し、約束の時間前に来て必死に男の遅刻を詫びていた男の両親は顔面蒼白になった。
「承知しました。ではこれで」
最初の見合いが破談に終わってから5年。
私は見合いをし続けているのだけど何故か毎回何がしかの理由で駄目になり、未だ独り身。私の心は幼馴染にあるので平気だが、親はよく泣くようになった。
それにしてもこんな破天荒な人は初めてだ。もしかして私と同じで親が結婚を許さない恋人がいるのかも。
実家を顧みない愚行に出た理由がそれなら納得できる。きっと勘当も覚悟の上の命がけの恋なのだ。
その勇気が羨ましい。今からでも遅くないだろうか?
「違うんだ。待って!実は俺は転生者でここは"秋桜の丘で永遠の愛を君に”という小説の世界なんだ。主人公の侯爵が政略結婚した妻に愛することはないと告げてから始まる話で、君は侯爵の初恋の人で俺と君は愛のない夫婦なんだ。でも俺は前世から君が推しで!君に愛されるにはどうすればと色々考えてて寝坊してテンパって、つい主人公の台詞を言っ……」
「失礼します」
幼馴染への想いが止まらなくなった私は、何事か言って引き止めてくる男を振り払って屋敷を出た。
屋敷の外で幼馴染が立っていた。
彼は毎回見合いの場に来て不安げに結果を聞いて来るので今回もいるとわかっていた。
「侯爵家当主になった。もう誰にも邪魔させない。子爵家も僕らの子達に継がせればいい。君を愛してる。だから僕と結婚……」
求婚途中の彼に5年ぶりに抱きつく。5年経っても変わらず私を愛する幼馴染を私も変わらず愛してる。
私がするべきだったのは幼馴染を諦める努力ではなく、結ばれるために二人で頑張る努力だったのだ。
男のお陰でようやく気がつけたのに幼馴染一人に頑張らせてしまった後悔で胸が痛い。
「私も愛してる。あの丘に連れて行って。今度は私が貴方に誓うから」
「じゃ、二人で誓い合おう」
永遠の愛を君に。
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