科幻短歌【短歌の部・二十首連作部門】

狩野緒 塩

人工物を溶かして

カプセルの中の僕見て傑作と恍惚の君照らす光よ


霧の中実験体の墓守は参る者無きこの地で一人


ヴァーチャルの引き金を引くその先で倒れた怪物ものに魂あるか


建物を覆い尽くした蔦と葉に巣を作るのは鳥とロボット


幼少期宇宙の図鑑読み漁り抱いた憧れ胸に旅立つ


太古へと戻りて見るは銀色のタイムマシンと導の炎


過去へ飛びパラドックスの証明を「親鳥食えば卵は消える?」


カプセルへいずれ未来で出会うまで様々な種よノアの箱舟


邂逅を繰り返す日に終止符を!在りし日の君目に焼き付けて


限りなく本物に似た偽物よ価値の天秤乗せる心臓


ウイルスが僕のデバイス乗っ取った無害らしいが寝言うるさい


懐古せよ退化と進化繰り返す時はさながら回転木馬


「偽物の目にも涙か」大見出し機械人形心を宿す


実験は成功したと告げる医者電子の脳に溶ける身体しんたい


花を手に一人ぼっちの星で待つ緑は繁る君が死んでも


宇宙人拝啓君へ「ここにいる」信号送り救助を待つよ


軒下の白熱灯の点滅は誰かが送るモールス符号


サプリより肉のステーキ食べたがる時も進歩も人を変えれず


電脳が支配する都市ただ一人剣を手に取る愛しい友よ


滅亡後掃除ロボット旅に出る「人ノ居ヌ間ニ選択シヨウ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

科幻短歌【短歌の部・二十首連作部門】 狩野緒 塩 @KanooSio

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ