高校で不良として腫物扱いをされている荒井淳太。ある日授業をサボった彼が屋上で出会ったのは、魔法を練習中の一つ上の先輩――清川素子だった。『魔法使いの弟子』を名乗る彼女は、初対面にもかかわらず淳太を弟子にしようとスカウトしてくるが当然淳太は断る。しかし、彼女はその後何度も淳太の前に現れ、彼も徐々に心を開いていき……。
先輩は実際には魔法らしいことを何もできず、逆に淳太は他人の嘘を見抜くというそれこそ魔法のような力を持っている。そのため先輩後輩の関係とは裏腹に、年上らしい大人っぽい態度を取ろうとする先輩と、それをあっさりあしらう淳太というすぐに力関係が逆転する二人のやりとりがとても楽しい。
一見正反対な二人だが、淳太が不良になったのも先輩が魔法使いを目指しているのにもそれぞれ事情があって、互いの過去を知っていくことで絆が深まっていく過程がとても良い。でも、ある一点で二人の考えは大きくすれ違っていて……。
それぞれ孤独を抱えた二人が出会いを通して成長していく姿が眩しく、そこにちょっぴり魔法のスパイスをまぶした魅力的な青春劇だ。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=柿崎憲)