エピローグ

「ねえ、ガイアまだ起きないの?」

 ベッドの脇で、ルーアは金色の瞳を瞬かせながら見上げる。

「父様。ガイア、ケイオス兄ちゃんに負けちゃったの?」

「いや。彼女は負けなかったよ」

 冥王サタンはルーアの頭を撫でて言う。

「心のパズルの完成は、ガイアもケイオスも同時だった。現に、ケイオスはちゃんと戻ってきただろう?」

「じゃあどうして?」

「一つには、ガイアの体がまだこの世界になじんでいないからでしょう」

 サタンは振り向いて、そこに立つ青い瞳の男を見やる。

「今日はメビウスかベリアルか、どちらだ?」

「私を生み出したあなたくらいは見分けてください。ベリアルですよ」

 片眼鏡を直しながら、ベリアルはルーアに答える。

「ガイアの体は元々異世界のものですから、この冥界になじむには少し時間がかかるんですよ。とはいえ、そろそろ目覚めてもいい頃ですが」

「絶対目覚めさせてやる。僕はこいつにリベンジしなきゃ気が済まないんだ」

「落ち着いてください、ベルゼバブ様。それだからケイオス様をガイアに取られるんですよ」

 息巻いているベルゼバブに、紫の瞳の魔女が冷静に答える。

「アリエル、そういうことを言うからケイオスくらいしか友人がいないんだぞ」

「私、男性は好みじゃありませんの。だから結構ですわ」

 くっくっとサタンは笑う。

「君のことが好みな男性は多いのだがね」

「俺、アリエル姉ちゃん好きー」

 ルーアもぱっと手を挙げて言った。その横で、サタンは少し首を傾げる。

「しかしなぜ目覚めないのかな。ルールが変わって、ガイアもこの世界のゲームに参加できることが決まったのに」

「……怒ってるんですよ」

 ベッドの脇に座っていたケイオスが、苦笑して告げる。

「俺が必ず帰ると言ったのに、ガイアが迎えに来るまで自分のからに閉じこもっていたから」

 ケイオスは立ち上がって集まった者たちを振り返る。

「でもゲームが大好きなガイアのことです。みんながゲームをしていたら、とても眠ってはいられなくなりますよ」

「ゲームだねっ。うん、やろうよっ」

 ルーアは早速、大人数でできるゲームの道具を取ってくる。皆も、それぞれゲームができるテーブルや飲み物の準備などを始めた。

「ガイア」

 その中で、ケイオスはベッドで眠っているガイアに声をかける。

「早く帰っておいで。みんな、お前を待っている」

 額にキスを落として、ケイオスはガイアの頭を撫でた。

「そして一緒にゲームをしよう」

 ぴくりと、ガイアの瞼が動いた。

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幼女と冥界の王子様 真木 @narumi_mochiyama

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