第4話 ぽんぽんぺいん

 前回、夏風邪が原因で食事が摂れなくなった話をしたが、あのトラウマは本当に強烈だったようで今も体に染み付いている。

 熱が出た、頭が痛い、喉が痛い、程度ではピンピンしていられるのだが、少しでもお腹が痛いかも…?と感じた途端メンタルも弱々しくなってしまう。お腹が痛い気がしてくると気持ち悪くなるかもという不安に駆られ、酷いと過呼吸にまで発展してしまう。他の人で腹痛くらいで休む人が少ないので、腹痛くらいで休んでしまう私が本当に情けない。

 また、私はあの夏風邪から吐くことが怖い。気分が本当に悪くても飲み込んで我慢してしまう。もう何年嘔吐というものをしていないだろうか。吐くことへの経験値がなさすぎて、もしもの時何かで受け止められる自信がないため持ち歩くカバンには何枚もビニール袋を忍ばせている。

 嘔吐することに恐怖を抱いているせいで、歯を磨くことと歯科を受診することが苦手だ。口の中に異物が入ることがかなり不快で吐き気を催すので、なるべくヘッドの小さく毛の柔らかい歯ブラシを使用している。それでも苦痛なので毎回歯を磨く時は涙を流している。そんな思いをして毎日一生懸命歯を磨いているが、それでも虫歯ができやすいので泣く泣く歯科に通っている。医師も毎回歯磨き講習をしてくれるのだが、苦しくて言われた通りにできなくて申し訳ない。

 私の母はかなり酒豪な人で、仕事終わりにベロベロに酔うまで飲んで帰宅することが多く、帰宅後は大抵嘔吐していたのだが上手く吐けないときは指を突っ込んでまで吐いていたし、酔っていないときも「なんかムカムカするから吐いてくるわ~」と軽いノリでトイレに行くので少し尊敬する。こんな母の姿を見てきたことと、保育現場で働いていた経験から他人の嘔吐の現場には不快感をあまり感じない。あくまで自分の身に起こることに恐怖しているのだなと最近気付いた。

 それにしても腹痛のみで休んでばかりいては社会的信用にも関わるのでどうにか改善したい。自分でも内蔵の異常ではなく思い込みから来ているとわかっているため(何度も病院を受診しているが異常なし)整腸剤や吐き気止め、最終手段で精神科からもらっている頓服薬でなんとかしのいでいる。早くこの思い込みから抜け出せるようになりたい。

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 17:00 予定は変更される可能性があります

病気だった。 長谷川ももか @oniku_89

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ