第17話 今世での新たな目標
石版大戦も終わり、スマホの中へ還ってくると、そこには治療を終えて完治したマチョルがいた。
「アニキ! すごかったッスよ!」
マチョルは目を輝かせて俺の前まで駆けてくる。その様子はまるでヒーローに憧れる少年のようで、そんなマチョルの純粋な眼差しに苦笑してしまう。
「……俺はただ勝ち筋がある試合を落とすのが嫌だっただけだ。これでも神剋のミシカライザーだったんだからな」
素っ気なくそう言い捨てるが、それでもマチョルは嬉しそうだ。
「マチョル、ありがとな」
「へ?」
礼を言われると思っていなかったのか、マチョルは間の抜けた声を上げる。
「お前は俺を信じて自分の敗北を受け入れて武器を残した。俺に繋げるためにな」
今回の石版大戦においてはこいつがMVPと言ってもいいくらいだ。
こいつは勝敗を分ける局面において、咄嗟の判断で勝ちへと繋がる道を残すという役割を果たした。根性なしのトライコーンとは比べ物にならない。
どんなときでも最善を尽くすため思考を止めず、自身の役割を遂行する。
それは当たり前のようでいて、その当たり前ができない奴はごまんといる。
「それに大事なことを思い出させてくれた」
カスレアに転生したことで絶望して人生という勝負を投げ出していた俺にとって、この勝ちは何よりも価値のあるものだった。
ミシカライザーは勝たなきゃ意味がない。俺はまだ勝つことを諦めてはいけなかったのだ。
見方を変えればこれはチャンスでもある。
人間に戻れないのならば、カスレアに生まれ変わってしまった現状でどうするかを考える。それが俺が今するべきことだ。
ここぞという場面で博打が打てる度胸のあるミシカライザー。忠実に役割を遂行するゴブソイル――そして、神剋のミシカライザ―が生まれ変わったカスレア。
這い上がる前の材料としては十分すぎるくらいである。
「マチョル。お前、俺と一緒に〝てっぺん〟取る気はあるか?」
俺の今世での新たな目標。それにはレイナだけではなく、共に戦うことになるマチョルの協力も不可欠だった。
「どういうことッスか?」
「俺はレイナを神剋のミシカライザーにする。モンスターに転生しようと、俺は石版大戦のプロだ。どんな状況からだって勝利へと導けることを証明してやる」
俺の目標は、ただのモンスターになった俺でも、ミシカライザーになれるということを世界に示すこと。そのためならば、自分のファンだった命の恩人だろうと、モンスターとなった自分自身だろうと、なんだって利用してやる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます