第8話 虹の幻獣アルコバレアス
[虹の幻獣アルコバレアスは、古代セレスティア神話に登場するモンスターの一体だ。
古代セレスティア神話は、天空人と呼ばれる浮遊島に暮らす部族を率いた半神半人の青年アスタマ率いる人間と天空を支配していた神との戦いを描いた壮大な物語である。諸説はあるが、現代まで残っている神話の中では一部の地名が現代にも残っており、古代セレスティア神話の出来事は実際に起こったことなのではないかとまで言われている。
かつて神と人間の戦いは絶え間なく続いていたが、アスタマが霊峰アルカンシエルにてアルコバレアスを石版に封じてから戦況は大きく変わることとなる。
アルコバレアスは、古代セレスティア神話の中でも最強のモンスターの一角と言われており、アスタマの指示には忠実に従い、戦場では鮮やかな七色の魔法を使いこなして無敵の強さを誇ったと伝えられている。
虹はアルコバレアスの流した涙から生まれた、その身体から流れた血が固まってできた大地がセレスティア神域東方の浮遊列島を作った、吐息からは虹色の霧が発生して時空の流れを捻じ曲げることができる、という伝説もあるほどだ。
最終的にアルコバレアスは神々の総攻撃を受け、アスマタと共に霊峰アルカンシエルにてその生涯を終え、死後その肉体は霊峰の一部になったとされている。
アルコバレアス並びに彼を使役したアスタマは規格外の存在として描かれているが、アスマタが使役したときには既に規格外の力を持つモンスターとして描かれており、その出自やどうしてアスマタに従順に従っていたのかは不明である。]
アルコバレアスは、古代セレスティア神話にしかその情報が載っていない。この世界では大抵の場合、神話に出てくるモンスターは希少なだけでその存在が確認されているものがほとんどだ。
トライコーンなんて遺跡で石板を掘り起こして手当たり次第に召喚すれば、一ヶ月程度で手に入るのがいい例だ。
しかし、アルコバレアスは石版状態でも発見はされておらず、ましてやこの時代まで現存している状態で出会うのは困難を極めるだろう。
だからこそ、神剋のミシカライザーとしての権限をフル活用してここまできた。
「さて、長期戦になりそうだし、軽く飯でも――」
「ルオォォォ……」
そのとき、背後から低い獣の唸り声が聞こえてきた。スマホから顔を上げれば、周囲は虹色の霧で覆われていた。
「会いたかったぜ、アルコバレアス」
まさかこんなに早く出会えるなんて思わなかった。これじゃあ、まるでアルコバレアスから俺に会いにきたようなものだ。
「お前を手駒にすれば、俺はもっと強くなれる……セット、クロノガルム」
俺は光属性に有効打を持つ闇属性のモンスター、クロノガルムをセットする。
「ミシカライズ」
振り返るのと同時にクロノガルムを召喚する。
体長五メートルはある虹色に光る鬣を蓄えた二足歩行で悠然と立っている白銀の獅子。その輪郭は光が屈折しているせいか、どこかぼやけたものに見えた。
「お前を使役して俺はもっと高みに行ってやるよ」
「ルオォォォ!」
こうして現代まで生き延びた神話そのものとの戦いが始まった。
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