第2話 勝者へのインタビュー

 試合が終われば、待っているのは勝者へのインタビューだ。


「ケイム選手。記念すべき四十回目の神剋防衛おめでとうございます! いやぁ、今日も実に見事な試合でしたね!」


 レポーターはマイクを向けながら賞賛の言葉を並べてくる。

 神剋戦は三ヶ月に一度で、年に四回。今回の防衛戦で俺は晴れて十年間神剋の称号を保持し続けたことになる。いつの間にか年数を数えるのも億劫になっていたから、防衛回数を口にしてくれるのは正直助かる。


「あはは、ありがとうございます。挑戦者のレイブ選手もお強い方でしたので危ない場面は多々ありましたが、みんなが頑張ってくれたので何とか勝つことができました」


 試合内容は傍から見れば、接戦の末の辛勝といったところだろうか。

 石版からモンスターを召喚して戦う〝石版大戦〟の頂点、神剋戦。全世界にも配信されている試合である以上、神剋の称号を持つミシカライザーとしては興行収入のことも考えなくてはいけない。

 過去の神剋には、圧倒的な強さを見せつけるタイプのミシカライザーもいたようだが、結局挑戦者から対策を立てられて敗北してしまった。


「さすがは神剋のミシカライザー! やはり勝利のカギはモンスターとの信頼ですか?」

「ええ、モンスターとの信頼関係は大きな力になりますから」


 そこで言葉を区切ると、試合終了後に考えていたコメントを述べる。


「我々ミシカライザーはこの世界に息づくモンスターを石版に封じ込め、使役して暮らしています」


 この世界には数え切れないほどの多くのモンスターが暮らしている。人間は長い歴史の中で、モンスターと共存して今の文明を作り上げた。

 中でもモンスターを石版に封じ込めて使役するミシカライザーは文明の発展に多いに貢献しただろう。

 石版に封じ込めたモンスターへと魔力を与え、彼らに〝神格〟を与えることで神に近い存在へと〝神化〟させる。それこそミシカライザーの役割であり、この世界の理だ。


「彼らがいなければ、我々は今の暮らしを謳歌することができない。石版大戦を生業とする身としては、特に信頼と愛情が大切だと思っております」


 昨今では、自然に生きるモンスターを石版に封じ込めて戦わせることに異を唱える者も一定数いる。

 それでも、モンスター同士を競い合わせる石版大戦というコンテンツが世界で最も人気であることを考えれば、そんな意見は少数派の戯言だ。


「そういえば、ケイム選手は様々なモンスターを使役していますよね。歴代神剋のミシカライザーには相棒とも呼べるモンスターがいたと思いますが、ケイム選手の相棒はどのモンスターになるのでしょうか?」


 レポーターはふと思い出したように俺へと質問を投げかけてきた。


「ははっ、確かに僕と言えばこのモンスターだ、というイメージはし辛いと思います」


 俺は苦笑いしながら答える。

 石版大戦で活躍するミシカライザーは、その人物を象徴するようなパートナーとなるモンスターが自然と決まっていくものだ。


 しかし、俺にはそういったモンスターはいない。


「強いて言うなら、そうですね……試合前に一番調子のいい子が相棒ですかね」

「さすがケイム選手! どのモンスターにも平等に愛情を注いでいるからこそ言える言葉ですね!」


 俺がそういうと、レポーターは感心した様子を見せた。


「それでは最後に、画面の向こうにいる視聴者の皆さまへ一言お願い致します」


 レポーターの言葉を合図に、俺は口を開く。


「皆様、応援ありがとうございます。これからも仲間としてモンスターを信頼して共に戦っていきますので、引き続き応援の程よろしくお願いいたします」


 笑顔を浮かべ、深々と頭を下げる俺に降り注ぐ取材陣からの拍手喝采。

 今回の石版大戦とインタビューも無事、好評のままに終わるのであった。

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