第8話 くるくるリンの危機

わたし くるくるリン 神様から迷える人間を救うように使命を授かったの

 辛い溜息一つで あなたのもとにくるりん。


「はあ~」

 俺は人気の少ない廃工場の敷地内に入り込む。

 右手にはロープを握り締めている。

 重い重い、腹の出た自分の体重より重い溜息を吐いた。

 そして、右左、左右を確認する。

 いない。

「はあ~」

 失望で、今度は大気を腐らせる程の溜息を吐いた。

「どうしたりん?」

 きたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ。

 響く声に、期待して見れば、そのこは可愛い女の子がいた。

 ピンクのトリプルテールに、子犬のような瞳。

  一度見れば、網膜から残像が消えない可愛さ。

 噂どおりの天使だ。

 俺は、リンに襲いかかった。

 運動音痴の俺でも、こんな少女なら簡単に縛り上げられる。

 リンを縄でぐるぐる巻き。

 間髪入れず隠しておいたゴルフバッグの中に押し込む。

 さっと左右を見ると、人影はない。誰にも見られてない。

 やった、やったんだーーーーーーーーーーーーーーーー。

 俺は、急いでゴルフバックを担ぎ上げると、駆け足でアパートに向かった。


 家に着くと、俺はゴルフバックからリンを出した。

 息苦しかったのか、リンはぐったりしている。

 なにかまうもんか、死んでなきゃいいさ。

 これは、もう俺のもの、俺だけのものなんだ。

 俺は、リンを畳の上に寝かせて、じっくり観察を始めた。

 髪は枝毛一本と手無し。

 肌も生まれたての赤ん坊のように、染み一つ皺一つ無いつるつる。

 ゴクッ

 これが俺の自由になるかと思うと、生唾を飲んでしまった。

 肌触りを確かめようと、手を伸ばし掛けたとき

 リンちゃんの目がぱっちりと開いた。

「よくねたりん」

 なんだ、誘拐されたというのに意外と落ち着いてるぞ。

 落ち着け、相手はちっちゃい女の子、しかも縛られてる。

 俺に勝てるはずがない。

 俺に余裕が蘇ってきた。

「ねえ、おにいさん、どうしてそんなに目がギラギラしてるの?」

「それはね、リンちゃんが可愛いからだよ」

「ねえ、おにいさん、どうして口から涎がたれてるの?」

「それはね、これからリンちゃんがおいしそうだからだよ」

「ねえ、おにいさん、どうして口がそんなに大きいの?」

「それはね、これからリンちゃんを丸呑みするためだよ」

「ねえ、おにいさん、警察怖くないの?」

「それはね、リンちゃん天使でしょ。だから何をしても法には触れないんだ」

 リンちゃんの存在を噂で聞いたと気折れは歓喜絶頂した。

 だって凄い可愛い女の子でいて

 人間じゃないなんて。

 つまり何をしても法で罰せられない。

 こんな女の子に縁の俺が何をしてもいい存在を知ってしまったら、もう心の枷なんか吹き飛んだ。

「ふ~ん。おにいさん、そんなにリンを食べたいりん?」

「ああ、そうだ」

「なんでリンを食べたいりん?」

「それはね。愛のためだよ」

「愛りん?

 それって周りのお人形さんのこと?」

 リンを囲む部屋の棚には美少女フィギュアに人形が飾ってある。

 彼女達の一切の邪気の無い顔、現実女の邪気にまみれた顔とは大違い。

 癒やされる。

「確かに彼女達こそ天使。

 愛してもいた。だがどんなに愛しても彼女達とは一緒になれない。

 だが俺はついに、それを超える愛を見付けた。

 その愛のため」

「よく分からないりん」

「いいんだよ。愛なんて小難しいこと分からなくても。

 可愛い女の子は狼さんに食べられてしまう。

 それこそ古来より続く真実。

 では、もう我慢出来ないので頂きます」

 ぱっくんこ。

 こうして魔女ッ娘天使リンは食べられてしまったとさ。

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魔女っ娘天使くるくるリン 御簾神 ガクル @kotonagare

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