第二章 物語の始まり
「は~~~~~。」
俺は、深いため息をついた。
「どうしますか?宮月さん。」
「どうもこうもねえだろ。」
「そうですよね~。」
柴中は、両手を後頭部に置いた。
俺と柴中は、病院前のベンチに座っていた。
「あの少女――岩崎香澄さんの父親の願いはかなえてあげたい。だが……。」
「編集部が許さないんでしたよね。」
「ああ。その通りだ。」
「こっちもファンの身ですからわかりますよ。」
「……。」
「あの作品は、ファンにとっては最高の本でした。というか、作者の岡宮先生はあの本しか書いていなかったですけどね。」
「……。」
「……。」
二人の間に沈黙が流れていた。
「暑いな。」
「そうですね。飲み物、いります?」
「ああ。冷たいのを頼む。」
「はい。」
柴中は、近くの自販機まで飲み物を買いに行った。
今の季節は夏。周りは、蝉がミーンミーンと鳴いている。
そんな中一人、俺はベンチで帽子も何もかぶらず、うなだれていた。
「はい。先輩。」
顔をあげると、飲み物を買ってきてくれた柴中がいた。
「ああ。ありがとう。」
俺は手を伸ばし、芝中が差し出したコーヒーを受け取った。
俺は受け取って、コーヒーの缶を開けた。そして、一気に飲み干した。
「あ~~~~……。」
「本当にどうしますか?」
「……。」
「今回。この問題は、今までで一番難しいんでしたよね。」
「ああ。今まで、作品が終わった・打ち切りになったことで、自殺を謀ったのは、今まで聞いたことがない事例だ。」
「ん……。」
「この世界は、いろいろ会社があるが小さい会社の事件は、そんなに広まらない。」
「……。」
「だけど、そんな一人が自殺した。とかだと、意外とこの世界内では広まりやすいんだ。それに大きな会社だと、父親・母親が調べて見つかると……、どうなる?」
「今の時代だと、ネット・SNSで拡散されまくるでしょうね。」
「ああ。その通りだ。俺らの会社――森翔社は中堅あたりに位置する会社だが、あの大手会社――KENOKAWAだったら、一瞬で広まる。そうなったらどうなる?」
「一瞬で崩壊して、大ブーイングが起こりますよね。SNSで広まって。そして、サイバー攻撃なども受けて、会社は崩壊。ですよね?」
「お前よく知ってるな……。」
俺は内心驚いた。
「………。俺は。」
「ん?」
「おれは、この森翔社に入る前は、今は崩壊した会社――海翔社にいました。」
「そうだったよな。」
「海翔社は、発行した本が全て、白紙だったことがあって。それで大炎上。それで、発行部は、全員総入れ替えという状況になりました。ですがそれでも火は消えず、燃え続けて社長などの中枢も入れ替えました。ですが、二回目がありました。」
「……。」
「二回目は、ページが乱雑に入っており、探しながら読む国語辞典風スタイルになり、大炎上。これで、会社は、解散しました。そこから、この会社に雇ってもらいました。」
「……そうか。」
「はい……。」
「だが、一人一人に歴史はあるものだ。お前の人生の歴史の一ページにその件も、今の件も含まれているんだろうな。」
「……先輩は。」
柴中がつぶやいた。
「先輩は、どうしたいんですか?」
「………俺は……。」
そして、ここから新しい幕が開けていくのだった。
ただ一声 雨蛇 莉永 @fujita_jaki
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