【百合】傷付いた元聖女が素敵な――いや、狂った王女に溺愛される話っ!

偽聖女として国外追放されてしまう本物の聖女『アンジェ』とアンジェが好きすぎて、少しだけ頭のネジが飛んでいる王国の第二王女『シャルロット(以降、シャル様)』による溺愛百合ストーリーです。

冒頭の書き方が良く、世界観の設定を地の文(キャラのセリフ外)で表現しつつ、物語を進行されていることが際立っていました。また、その点に関しては読みやすさに直結しており、「なるほど、そういう設定か」と理解しやすかったです。同時に、設定をツラツラと書いている訳ではなく、きちんと読者にも想像の余地を残して描写されている点は非常に良いと思いました。

まぁまぁ、そんなお堅いことはさておき――、

とにかく、このシャル様の狂った愛がすごいっ!
『シャル様、やべぇ』と思ったシーンを抜粋させてください。

夜会にて国外追放を言い渡された後、シャル様はアンジェを連れ去って寮に戻って来ると、アンジェがお付き合いしている人がいない「フリー」の状態か確認をするのですが、アンジェがフリーだと言った途端、シャル様は――。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! アンジェ様可愛すぎますううううううううううう!!!」

と大絶叫し、挙句の果てには――。

「はぁぁぁっ……これまではアンジェ様の魅力に気づかない節穴とはいえ一応婚約者がいらっしゃいましたから我慢しておりましたけれど、もうそのような必要もございませんし思う存分アンジェ様を愛でられますわ! あぁ、この腕にすっぽりと納まる小柄さ、細くもしなやかで柔らかい体つき、さいっこうの抱き心地ですの~!」(「第9話 友人の暴走」より抜粋)

抱きつくのでした・・・。

あの暴走はすさまじかった。うん、引くくらいには、です。

それが冒頭で見た時の感想でした。でも、物語を読み進めていくうちにシャル様ってどこか真面目そうに見えたり、狡猾そうで格好いい場面もあったりするキャラで、とっても愛着が湧く性格をしていて面白いと感じました。(基本、アンジェ絡みとなると大体は飛んでいるイメージではあるのですが…。)

それに相対する主人公『アンジェ』は冒頭、聖女の力を使って、『誰かの力になるため』に帝国を奔走する少女だったわけですが、そこから一転、『偽聖女』と断罪され、心に深い傷を負った可哀そうな少女というイメージに様変わりします。

ただ、そんなアンジェは追放の後から少しずつ、色々なきっかけを通して『楽しいことは何なのか、自分とは何なのか』と悩み、考えながら前に進む姿が話数を重ねるごとに増え、感情移入できる場面に多々、遭遇しました。

そう言った意味ではこの作品の良い所は『キャラたちの感情がダイレクトに伝わってきて感情移入がしやすかった』という点だと思います。キャラ間の言葉と言葉のキャッチボールが繊細で、感情の起伏や流れが読みやすく、伝わりやすいように工夫されている点が素晴らしかったです。

最後になりますが、本当にレビューの一つでは語れない魅力が詰まっている作品だと思います。この作品の魅力をあれやこれやを書き殴りたいところではございますが、端的にまとめとさせていただきます。

今後も筆者様のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。