Pursuers

第20話 蛍

「で、でかい…！」

ミアがモグラのような魔獣を見て体を震えさせてる。それもそうだ、自分の数倍あるのだもの。私も内心めっちゃ焦ってるモン！！

さて、どうしたものか。見た感じロンさんは使い物にならない、ミアも魔力がまだ回復してない…！

その時私が気づいたのはロンさんの腕輪だった。一つしかついてないのだ。

「ロンさん腕輪は？」

「な、無くなっちまって…」

ッチ、という私の舌打ちが響く。ミアは少し肩を跳ね上げて恐る恐る私の方を見た。

彼女の顔が余計青ざめた理由はわからないが、今は戦いに専念しよう。

急に爪を立てて攻撃してきたのをミアと一緒に回避する。

戦えるのは琥珀さん、アロ、私。

琥珀さんにどうにかして欲しい場面だが、得体の知れない彼の後ろにつくのは…

アロは何かを考えているようだし、こういう時は何言っても聞かない…多分。それに今は彼が囮役のように、敵を惹きつけてくれている。

つまり私がどうにかしなきゃいけないのだが…

その時目に入ったのはロンさんが持っていた杖。

魔法使いは固有魔法以外は杖などの魔道具が必要だ。私は服などの装備に忙しかったのと、練習で使ってた杖が魔力に耐えきれずとかで壊れてしまった。

自分に合わない杖だとよくあることらしい。

「貸して！！」

私はロンさんから杖を奪って、魔獣に向ける。

「フロート！」

もちろん持ち上げるのは魔獣じゃない、あんなの持ち上げようとしたら持ち上がる前に魔力切れを起こす。

私が持ち上げたのはそこらへんの石ことだった。一つ一つが軽く小さいが、束になって連続でこられたら流石に…

私の戦法は正解だったらしく魔獣は倒れた。もちろん殺したり気絶させたわけではなく、ただ転ばせた感じだ。

体が大きくて動けていない。

モグラは必死に手足をバタバタさせて起きあがろうとしているが叶わない…あれ？

違う、起きあがろうとしてるんじゃない…蛍を狙っているんだ。

「ルカ！！」

ハッと我に帰った時には少し遅くて、海方面から来たであろうカニがハサミを振り下ろした。

モグラ魔獣ほど大きいわけでもない、普通の大人くらいのサイズだ。

だがそのギラギラひかるハサミに恐怖を覚えた。少しばかり足がすくんでしまって、動けなくなってしまった。あぁ、これダメだなと思った時に私を助けてくれたのはロンさんだった。

私は地中に沈む。息できない…これはこれでやばいかもしれない。