②先天的才能と後天的才能
私は才能を二種類で考えています。一つ目は持って生まれた才能のこと。二つ目は後から手に入れた才能のこと。小説家にもその二種類があてはまると思っています。
先天的な才能は元々持っていた感性が読み手のニーズに上手く合致した例だと思っています。天才作家は独創的な世界観とこの者足りえる特徴的な文章で構成された小説を書きます。彼らの特徴的として、自分の文章に強固な信頼を置いています。たとえファンから駄目だしを食らったとしても自分の文体や世界観を変えません。このような強者にのみ与えられた権利、つまりはエゴが核心に刻まれていると、個人的ではありますが思っています。ただそれは単に独創的であればよいといったものではなく、読み手の需要が自然に満たされたことに付随するものなのです。変な人が変なことをやればそれは奇怪な行動ですし、周囲には認められません。世界の価値観と合致したときに初めて優秀な小説であると認知され読まれるようになるのです。
後天的な才能は元々は凡夫であった者が読者のニーズを上手く汲み取って小説に落とし込んだ例だと思っています。先天的な才能の人は自分のために小説を書いているといった気概があり、自分が面白いと感じるからこれを読む人も面白く感じてくれるだろうという自己愛があります。しかし、後天的才能の持ち主は読者に向けた小説を書くのが異なる点です。自分が面白いと考える前に客観的に自分の小説を分析し、思考の片隅に読者を置いて執筆していると思っています。その者は先天的才能の者よりもいくぶんか謙虚で、自分の文章へ駄目だしを食らっても、多くいるのファンの意見を尊重するでしょう。ただ、読者のニーズに合った小説ばかりを提供し続けても、小説が娯楽性に重きを置かれ過ぎて、文学の美しさが損なわれるといった意見もあるでしょうが、いつの時代も先天的・後天的な小説家の割合は変わっていないと思っています。しかし、娯楽性ばかりを求めすぎて純文学が埋もれる、または文学が発展しなくなるといった問題を抱えていることは事実でしょう。
つまりは、私が言いたいのは、私は先天的な才能を持つ者に憧れた凡夫であると言うことです。凡夫がめざすのは自分の筆力を諦め、後天的な才能へと進むことだと思っています。まだカクヨムでの執筆経験が浅い私が言うことではないと思いますが、天才と一般人とには越えられない壁が存在し、先天的な才能を持った者の感性は過去の経験が上手く組み合わさって醸成された奇跡なため、それを凡夫が手に入れようと思っても無理です。さっさと諦めをつけるべきです。無力を悟るべきです。読者を楽しませる方法はいくらでもあるのに筆力に固執する必要はありません。
私の前には大きな壁が立ち塞がっています。読者の心を強く揺さぶる文章を書くという大きな壁が、そびえ立っています。前々からも言っているとおりに、私は私の文章が嫌いです。他の作者の小説ならばいくらでもトキメキや心の揺さぶりが見えるのに、私の文章はまったく見えません。自己肯定感が低いからなのか、本当に文才がないからなのか。どうするべきなのか。行く末も何も見えません。
文才のない私には何ができるのか。それは小説を書き続けることです。文章技術があれば読者に伝える表現の幅が増えます。自分も読者も心を揺さぶる小説を書くことができます。本当に私は諦めが悪いと思っています。自分の筆力が分析できているのにまだ才能を諦めきれません。さっさと諦めたら、突き抜けるほどの青空を優雅に舞う蝶のように大空を飛んでいるかもしれないのに。可能性がゼロでない限りは、諦めたくても夢が私をかどわかしてしまうのです。
私は私が一体何者なのか分かりません。あの空を駆けるアゲハ蝶の幼虫なのか、目も耳も手足もないミミズなのか。いつか私の選択を後悔するかもしれません。けれど、まだ起きていない未来に文句を垂れても仕方がないのです。
改めて読み返してみると、我ながら色々と矛盾したことを書き連ねていると思いました。まだ考えが上手く心の中でまとめられていないからでしょう。内と外とで感情がせめぎあっています。考えることは小説家としてなくてはならないものなため、これも勉強だと思って、自分の整理を続けたいと思いました。
長文にはなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
徒然日記 馬場 芥 @akuta2211
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