かなたの化石発掘日記 2人台本 (不問2)

サイ

第1話



ぼく:7月23日。今日から夏休みが始まります。自由研究のテーマを何にしようか、いっぱいいっぱい考えて、化石発掘をすることにしました。いったい何が見つかるかな。明日から楽しみです。




ぼく:7月24日。家の庭で化石発掘をしようとしていたら、お母さんが、


お母さん:「かなた、プール出してあげる。水あそびしよう!」


ぼく:と言ってきました。やったぁ。去年は、


お母さん:「ぷ、プール…?穴空いてるしやめとこうよ…。」


ぼく:と言っていたのに。どうやら穴は塞がったようです。こびとさんがなおしてくれたのかな。




ぼく:7月25日。今日も家の庭で化石発掘をしようとしていると、お母さんが、


お母さん:「かなた、公園いこっか!虫探しに行こう!」


ぼく:と言ってきました。やったぁ。虫は化石の次に大好きだからです。ちなみにお母さんに捕まえた虫を見せると、


お母さん:「……返してきなさい。」


ぼく:と言います。今日もやっぱり言われました。せっかく強そうな虫を捕まえたのになぁ。ちょっとざんねんです。




ぼく:7月26日。今日こそ化石発掘をしようとスコップを用意していると、お母さんが、


お母さん:「かなた、マク◯ナルド食べに行こう!」


ぼく:と言ってきました。やったぁ。


ぼく:マ◯ドナルドに行ってみると、今週のおもちゃは恐竜のおもちゃでした。お母さんは、


お母さん:「大人サイズ食べてみる?」


ぼく:と聞いてきました。大人サイズって、大人になれたような気がしてすごくいいな、と思ったのですが、恐竜のおもちゃがほしかったので、大人デビューはまた今度にしました。




ぼく:8月23日。大変です。あれからお母さんがいろんなところへあそびに連れていってくれたので、化石発掘がちっともできていません。明日からさっそく始めようと思います。忘れないようにお母さんに言っておくと、


お母さん:「もう好きにして」


ぼく:と気が抜けたような声で言いました。お仕事でつかれているのかもしれません。すてきな化石を見つけたら、お母さん元気でるかな。




ぼく:8月24日。化石発掘をしていると、キラキラな小さい石を見つけました。友だちのゆうちゃんは「龍の涙だ!」と教えてくれました。お母さんに見せると、


お母さん:「そう、すてきね」


ぼく:と言って、龍の涙の本当の名前を調べてくれました。でも忘れちゃいました。




ぼく:8月25日。化石発掘をしていると、尖った石を発見しました。これは恐竜の歯の化石に間違いありません。ぼくはおおよろこびでお母さんに見せると、


お母さん:「そう、すてきね」


ぼく:と言っていました。でもお母さんの目は化石を見ているようで、見ていないような目でした。きっと疲れているんだと思います。明日はもっと深く掘ってみようと思います。




ぼく:8月26日。大変です。お庭から化石が全然出ません。もう犬のペロがすっぽり入るくらいいっぱい掘ったのに。友だちのゆうちゃんに「川の近くで掘ったら?」とアドバイスをもらったので、明日は川に行ってみようと思います。忘れないようにお母さんに言っておくと、


お母さん:「そう、すてきね」


ぼく:と庭を見ながら言っていました。




ぼく:8月27日。ゆうちゃんはすごいです。川でさっそく化石を発見しました。見た目は人の形をしているけれど、しゃべる言葉がよくわかりません。


化石:「きみのそれ、ケータイなの?パカパカしないの?!」


ぼく:パカパカするケータイとは何なのでしょう。お馬のように歩くのでしょうか。スマホに足が生えていたらこわいけどなぁ。




ぼく:8月28日。化石はぼくのスマホをすごくよく見ています。


化石:「これどうなってるの?アンテナはどこにしまってあるの?」


ぼく:アンテナってなんでしょうか。化石に聞いてみると、スマホから毛みたいなのが生えているそうです。普通にじゃまそうな気がします。何のためについているんだろう。




ぼく:8月29日。化石はまだぼくのスマホを見ます。


化石:「このケータイどこのやつなの?ボ◯ダフォン?ツ◯カー?」


ぼく:ボー◯フォンとか、ツー◯ーとか、ぼくにはよくわからない言葉をたくさん言っていました。どこの?と聞いていた気がしたので、ソ◯トバンクの子ども用スマホだよ、と教えると


化石:「どこそれ」


ぼく:と言っていました。ぼくも、それどこ?と聞いておきました。化石は震えていました。




ぼく:8月30日。化石は大きな声で言います。


化石:「ねぇ!ジャ◯コがないんだけど!駅前にあったよね?!」


ぼく:ジ◯スコってなんだろう。ぼくが生まれてからずっと、駅前にあるスーパーの名前はイオ◯です。


化石:「あと、そご◯もない!!」


ぼく:そ◯うはなんとなく聞いたことがありました。一回車で行ったことがあったからです。遠いけどあるよ、と言うと、


化石:「回らないそご◯はそ◯うじゃない!!」


ぼく:と言っていました。よくわからないけど、そご◯って昔は回転ずしやさんだったのかな。




ぼく:8月31日。化石の謎の言葉は止まりません。


化石:「デコったケータイで写メ撮ったり着メロ手打ちしたりしないの?!」


化石:「チョベリバすぎてmk5とか言わないの?!」


化石:「アウトオブ眼中とかマジやばたにえんとか言わないの?!」


ぼく:ぼくには全部呪文のように聞こえます。化石の話す言葉はぼくにはさっぱりわかりません。でもきっと歴史的に貴重な化石だと思うので、自由研究にこの化石を持っていこうと思います。




ぼく:ね、お母さん、ぼくの自由研究すごいでしょ。自信作なんだよ。これではなまる間違いなしだね!




お母さん:……いや誰なの化石って!!

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