連作短歌「檻の中に入れろ」

檻の中に入れろ

君の子のために私がチケットを取る　意味が分からないが動物園に行く

君とは手を繋いだこともないというに君の子は私の手を無遠慮に触る

動物園の動物はいいね悩むほどの自由が与えられてなさそうで

来世には君と絶対生涯が混じり合わない一匹狼になる

あれはゾウ、あれはタスマニアデビル、あれは愚かな私の元カノ

空回る私の元気「見てあそこにキリンがいる！」駆け足で離れる

綿あめを買って与えてやったのにもういらないという君の子

何でも君らの欲しがるもの全て与えてしまうのが間違いなのかもな

都合よく思ってるんでしょこの場面でレジャーシートも持ってる私を

アンパンマングミを手掴みで食べるそれしか方法はないけど不快

当たり前のように私が用意したお菓子私じゃない口に運ばれていく

帰りたがらない君の子に私が諭す君の子なんじゃないのかよしっかりしろよ

一日育児体験お疲れ様でした報酬はありません心が削れただけ

私なら一生出産しないだろうこんな生き物に責任を負えない

一番の不可解な生き物だった私が一日振り回されたこれは

この世界で一番いらない写真だな君の子供のピースサイン

「動物園また来ようね」って君の子が私に約束をする笑える

その「また」は一生来ないよごめんねってなんで私が謝るんだよ

私が男なら親子に見えていたのかな三人並んで手繋ぐ姿は

君の子を抱き上げ続けたせいで二の腕あたりが筋肉痛です