第57話 ユニマ国の最後2
遠くから、レッドが急いでこちらに飛んで来る。
「フウタ! やったな、体は大丈夫か! 神様からもらったとはいえ凄まじいスキルだな。お前はもう人族を卒業して、亜神レベルになってしまっているぞ!」
「このスキルは危険すぎる。このスキルは2度と使わない方がいい。この世界が壊れてしまうほど危険なスキルだ」
「フウタ、このスキルがあれば、誰にも文句を言われることなく、この世界全ての生き物の王として君臨できるぞ!」
「のんびりと幸せに暮らせる世界に転生させて下さいと、女神様にお願いしたはずなのだが、どういう訳かどんどん厄介なことに巻き込まれてこうなった」
「俺はそんな大王みたいな立場はいらない。この世界は、エルフ王や獣人王、魔王、それと人族の代表アリスの4人で上手く話し合いながら、多種族が幸せに暮らせる世界になってくれればそれでいい」
「それで上手くいくと思うか?」
「分からないな。永遠に生きるドラゴンにとって、この世界がどうなるとか、あまり興味はないのだろう。ドアブを倒した今が、この世界の新たな出発点だろうな。しかしここから長い年月が経てば、また権力争いが起こるだろう。レッドが言っていた同じことの繰り返しだよな」
「永遠に生きることができて、強大な力を持った者がいるとする。その者が世界を監視し、おかしな方向に進む前に誤りを正すことができれば、権力争いは起きないだろうな。もっともそれを神というのだと思うよ」
「フウタ。いいところに気づいたな。そなたに永遠の命を授ける。この世界の監視役となれ」
「それは、神様の仕事ではないですか……俺に神になれということですか?」
「こう見えても、神も忙しいのだよ。おまえも神になったら分かるぞ。だが最初は亜神からだな。グルニヴスの森のドラゴンヒルの近くに、お前の神域を作っておいたぞ。そこで暮らせばいいぞ」
「ドラゴンも永遠の命を持つから、レッドとそこに住めば調度いいぞ。子作りもできるようにしておいたからな。頑張れ」
あれ、もういない!
俺は、女神様から言われたことをレッドに説明した。
「面白そうだな。フウタ、神が用意してくれたという神域に行こう」
「勝手に亜神にされてしまった……亜神にされたら、また別の厄介事が待っていそうな気がする。だけど神域がどんなところなのか興味があるな。行ってみるか……でも場所が分かるかな」
「近くまで行ったら、何となく分かると思うぞ」
「そうだな、行ってみよう」
レッドと一緒にドラゴンヒルの近くのグルニヴスの森の上空に移動し、森を見ながら旋回してみた。森の中に光る場所があるので、その場所に降下してみる。
山の頂上部分が平らに整形された場所に、大きめの白い屋敷が建てられている。レッドと共に屋敷に入ると、中でメイドらしき女性が4名待っていた。
「あなたたちは誰ですか?」
「私たちはフウタ様に仕えることを、女神様と契約した者です。この屋敷の管理と家事を行います。私たちもフウタ様と同様に永遠の命がありますので安心下さい。この世界では私達のことを天使と呼んでいるかも知れないですね」
それから屋敷に置いてある装置の説明を受けた。
世界のどこの場所でも見ることができる水晶玉とか、どこにでも瞬間移動できるゲートとか……いろいろである。
まさに神様御用達ツールというべきものだな。
その後、俺はエルフ王や獣人王、魔王、アリスそしてアンジェとエメットに集まってもらい、神から亜神にさせられたことを説明するた。
ゴザリア国やエーデリア国、ユニマ国の統治を相談したところ、ゴザリア国はアリスが、エーデリア国はアンジェが、ユニマ国はエメットとその妻ミシェルが統治することになった。
俺が永遠の命を持つことを聞いたミシェルから、もしもミシェルの娘が生まれたら、俺の妻にすることを約束させられた。
つまり俺の子供が将来的に、3国の王になることで話が収まったという訳だ。
ドワブ教の生き残りの捜索は、サイレント部隊隊長のマットが引き続いて行う。
悪の根は完全に絶たないといけない。
世界の全ての民に通達を出した。
通達内容は、ドワブ教は禁教とすること、魔虫は見つけしだい国に報告する義務があること、国は兵を派遣して完全に駆除するというものだ。
この後、俺は何百年と何千年とこの世界の行く末を見守っていかなければならない。
これで良かったのかどうか分からないが、俺が出ていって問題を解決しないと行けないようなことは、少なくとも百年は起きないだろう。
それまで亜神として、ゆっくりさせてもらう。
それにしても『こう見えても、神も忙しいのだよ。神になったら分かる』と神が言っていたのが気になるな。
永遠に忙しいのが続いたら嫌だな。
荒野で途方に暮れていたらドラゴンが嫁になりました ゲンタ @gegegeno
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