第10話 東雲綾乃、再び。
東雲綾乃とのカラオケイベントからさらに一週間ほどが過ぎた朝。
嵐の前の静けさ、ってやつかな?
あれから特に何事もなく平穏に過ごしていた僕はバイトの出勤前にアパートの六畳一間でテーブルに座りながらポチポチとスマホを
東雲からのどうでもいいメールはスルーし、毎朝恒例の儀式、自分の名前を検索、いわゆるエゴサーチをかける。
声優、神坂登輝……検索結果ゼロ。
……まあ、いつもと変わらず。もはや知名度が一般人以下? 悲しいけど、これが現実だ。
そういえば、
累計100万部以上達成の大人気ライトノベル作品待望のアニメ化云々の文面と共に、放送時期とキービジュアル、それと同時に制作会社──加えていち早く声優キャスト陣まで告知されているようだった。
一旦スマホをテーブルの上に置いて一呼吸する。
早る気持ちを抑えつつ、台所でインスタントコーヒーを入れてから、改めてウェブサイトを観覧した。
「ぶぅ──っ」
次の瞬間、飲んでいたコーヒーを吹き出してしまう。
そこには原作小説の挿絵からアニメ調に描かれたメインヒロイン『
「と、橙華って何!?」
早速その名前をエゴサーチしてみる。すぐに何件もヒットした。
:新人キター
︰ワイ推し決定
︰prprしたい──
……というか結構バズっていたりする?
つうか、prprって何だよ!?
僕はすぐに柏木さんに電話する……出ない。もう一度……出ない。
再度──、すぐに切れた。
もうこうなったら直接事務所に乗り込むべきか、とか思っていたら、メールが来た。それも同時に二通も。
確認すると東雲と柏木さん。
どうせ東雲のはいつもの嫌がらせメールなんで、取りあえず後回しにして、真っ先に確認するべきは柏木さんのだ。
『通達。今日から君は当社専属アイドル声優の〝
それを見て柏木さんに鬼電するも……すべて不通。もはやテーブルで頭を抱えるしか出来ない。
すると今度は東雲から直接の電話が来た。この忙しい時に何だよ。こっちはそれどころじゃない、とかブツブツ呟きながらも、スマホに耳を
「もしもし」
『……………………そちらは橙華とかいうオカマ野郎の携帯でよろしいですか?』
「いえ、違います」
プチッ。即座に通話をオフ。
間を置かず再度、狭い部屋中に激しい着信音が鳴り響く。スマホの液晶には無情にも『東雲綾子』の文字が……しかし、このまま着信拒否し続ければ東雲はどんな行動を取るか予測不能だ。それだけ声優、東雲綾乃は悪い意味でやる時はやる。ちなみに彼女は武闘派だ。
「…………も、もしもし」
『……私、東雲綾乃。今貴方のアパートの前に居るの』
プチッ。
え……マジ? そんなヤンデレのテンプレいらないよ?
トゥルルル──
「……………もしも、」
『私、東雲綾乃。今貴方の部屋の前に居るの』
(何のメリーさんだよ!? ヤバい。今すぐここから逃げなきゃ──)
ピンポーン──
ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン──
僕こと声優、
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