第5話 顔出しデビュー!?
色々と波乱だった柏木マネージャーからの呼び出しから一日が過ぎた朝。
未だ興奮と困惑状態が冷めない僕に再び彼から連絡があった。
「ええっと……ここで僕は一体何を──」
それで今日のバイトはシフトの関係上やむを得ず休みをとって、昼過ぎに待ち合わせの駅に到着するなり、柏木さんが用意したワンボックスカーの後部座席に問答無用で押し込まれ、あれやこれやと沢山の機材と一緒に荷物の如く搬送された場所は、何処ぞのビルにあるスタジオビルだった。
多分アレだ。
何かのジャケット撮影とかに使われる本格的なフォトスタジオ……じゃなくて、何時間幾らとかで色んなシチュエーションで撮影出来るという、一部の界隈で流行りのレンタル撮影スタジオ。
僕は何やかんやで
そして今現在、広いカラフルな室内にあるテーブルの前で何をするでもなく椅子に座らされている。
もう嫌な予感しかしない。
「じゃあまずは撮影かな」
「え……まさか、この僕を、ですか?」
「そう。神坂君は今までメディアにあまり顔を出していないから、この機会に色々とアピールしようと思ってね」
そう言いながらゴソゴソと高級そうな一眼レフカメラや三脚を慣れた手つきで確認している柏木さん。
「で、でも今の自分は髪だって伸び放題でボサボサだし、着ている服だってダサいし、とてもじゃないけど撮影出来る状況じゃあ……」
「それなら大丈夫。今回のために専門のスタイリストさんを呼んでるから、ええっと……そろそろ来られるかと思いますが」
柏木さんがスマホを取り出し何やら操作していると、
「お疲れさまです! 遅れちゃいましたー」
突然部屋のドアが開いて、バタバタと大きなショルダーバックを抱えた妙齢の女の人が入ってきた。
「いえいえ時間ピッタリですよ。神坂君、彼女は
「もうそんなー。柏木さんの頼みなら断われないじゃないですか」
そう言って顔を真っ赤にして指をモジモジする小柄な彼女は、多分二十代後半ぐらいのちょっとファッションが独創的な、いかにもその手の業界人、って感じの女の人だった。
「は、始めまして、神坂です。相葉さん今日はお願いします」
とりあえず挨拶だけはする。
マネージャーの柏木さんはもう言うまでもなく、突然現れた美人な彼女も何気に怪しいところだけど、今は社会人としての礼儀を優先するべきだろう。
「こちらこそよろしくね。で、柏木さん、この子でいいのかな?」
「そうです。思い切りやっちゃってください」
「うーんと、ショタ系かー。ちょっとお姉さん張り切っちゃうかも」
(し、ショタ系ってなに? あ、相葉さんそんなにグイグイ顔を近づけないで、わ、わ、ホッペをペタペタしないで──)
と、何が何だか動悸やめまいやらでくらくらしているうちに、いつしか柏木さんからの流れるようなエスコートで「どうぞどうぞこちらに」と、スタジオ備え付けの鏡の前に座らされ、相葉さんといえばショルダーバッグの中からテキパキと、何だか良く分からない小ぢんまりとしたメイク道具? らしきものをテーブルに並べながら、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべていた。
(あ……これ絶対ダメなやつだ──)
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