第10話
「ええそうよ。貴方たちは私の望む条件に合致するのよ」
「条件……?」
「そう条件。同性であること、私が救った人であること、境地に立たされていても冷静でいられること」
指を折りながら条件を教えてくれる。
一つ目は異性が怖いとかまぁそんなところだろう。
アニメや小説だと男女が共に冒険するみたいな展開って多くある。
創作者側の立場になってみれば主目的とは別にラブコメという副題を簡単にくっつけられるから異性ペアを組ませるんだろうけど、現実でとなると怖い。
いつか性的な意味で襲われるんじゃと怯え続けなければならない。
相手にそんな気がなくてもね。
尽きることのない不安というものは生きる上での負担となり、結果に影響する。
変な不安要素を抱えるぐらいならば最初から同性とペアを組めば良い。と、解釈できる。
二つ目はこれに似たようなものだ。
自分が手を差し伸べた相手であれば裏切ったりしないだろうとか、対峙しても負けないだろうという安心感を得たいのだ。
信頼できる仲間ならともかく私たちは互いに信頼できる間柄とは言えない。
なにせまだ出会って二十分ちょっとだから。裏切られないないし裏切られても問題ないという安心感を得たい。その気持ちもわかる。
問題は三つ目だ。
これだけはわからない。いや、言ってることはわかる。何があっても冷静でいられる胆力が欲しいということだろう。意味はわかる。珠々はともかく私は冷静だった自覚はない。心のうちはもうバクバクでどうやった逃げるか、と必死に考えていた。冷静さを欠いていたと言えるだろう。要するにこの三つ目だけは私たちに見合わない、と思う。
「一ヶ月の猶予、そんなことに時間使っていられないというのであれば仕方ないと思うわ。だから無理にとは言わないけれど。一緒に戦ってくれると嬉しくてよ」
私は珠々と目を合わせる。
この一ヶ月なにをするか。
良く考えればすることなんて特にない。
家族とは顔合わせた方が良いんだろうけど、毎日毎日顔合わせたら互いに鬱憤溜めて死ぬことになりそうだし。
家族に対して嫌な気持ちを持って死にたくないし、嫌な気持ちを持たれて死にたくもない。
であるなら、この一ヶ月のどこかで会いに行けば良い。
じゃあ他になにをするか。うーん、とね。ない。珠々という大切な友達と一緒に居られるのであればなにも望まない。だから珠々に一任する。
「どうせ暇人でしょうし、良いですよ」
と、珠々は首肯する。
「そこの黒髪の方は?」
少しだけキョロキョロするけど、私しか黒髪は居ない。デフォルトだと思うんだけどなぁ。この髪色。ピンクとかオレンジとか鮮やかすぎる。トロピカルじゃん。
「使えるスキルなんてないですけどね。それでも良ければ」
「たかが数時間の知識ですけれど、スキルは使いようによっては活かせるものですわよ」
フォローされたが、多分私の認識と入間の認識は絶妙にズレている。
そんな気がする。
とはいえ、一々指摘するのはなんだか野暮だよなぁと思って黙ることにした。
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