第4話

 お世辞にも大きいとは言えない公園。

 それでもまぁ端から端まで走ったら五秒くらいはかかるから縦横それぞれ六十メートルくらいはあるのかも。

 広いと受け取るか、狭いと受け取るか、人によって変わる絶妙なラインだろう。

 「これをー、こーして」

 珠々は公園に設置されている水道の方へと一直線に歩く。

 しゃがんで蛇口を捻る。

 じゃーっと当然のように水は出てくる。

 勢い良く水は落ちて跳ねる。

 公共の物だからね、それで遊んじゃダメだよ、と心の中で注意していると、線のように繋がっている水に向かってふぅと優しく息を吹く。

 普通ならゆらっと水が揺れるだけなのだか、今回は違った。

 消防車のホースから水を放出したかのように勢いをつけて飛ぶ。

 公園のコンクリートを若干削ってしまうほどの威力だ。

 「おぉー」

 と、珠々は満足気である。

 「凄いでしょ」

 「凄いね」

 私はこくりと頷くと、彼女は立ち上がってえへんと胸を張る。ほとんど無いような胸なんだけど。珠々は高校生なのに胸がないのを気にしているので言わないでおこう。私ったら優しいね。

 「次は二華の番だよ」

 「私の番?」

 「使ってよスキル。私は見せたんだしさ、ほらほらー」

 期待の眼差しを向けられる。その視線に応えたい、という気持ちはもちろんある。だが、応えられない。絶対に、だ。

 だから私はふるふると首を横に振る。拒否。

 「えー」

 と、珠々は不満そうにむぅっと頬を膨らませた。

 なんとなく想像していた反応ではある。

 だからその反応に対して動揺とかはしない。

 「人に見せるようなものじゃないよ。私のは、ね。だから見せない」

 ぼんやりと頭の中で作り上げていた言葉をそのまま口にする。いつもならこの程度で引いてくれるのだが、今日はそういう気分じゃないのか引かない。珠々は「なんで」とぐいぐいくる。いつもと違う反応に少しだけ困る。

 「いやだってさ――」

 「私は見せたのに?」

 それを言われるとこちらは強く出られない。

 いや、そっちが勝手に見せたんじゃんとは思うけど。

 でも押し問答になるのは目に見えてるから言わない。

 大人な対応をするのなら、さっさとやってしまえば良いじゃないか、言ってしまえば良いじゃないか。

 そう思うかもしれない。

 でもそうはできない事情がこちらにはある。

 だって私のスキルは明らかにおかしいから。敢えて言葉を選ばないのならば心底気持ち悪い。自分でさえそう思ってしまうようなスキルだ。できることならもう一度ガチャを引かせて欲しいと願うほど。


 ――食べた相手のスキルを自分のものにするスキル。


 である。


 私は心の中で叫ぶ。


 こんなのあってないようなもんじゃん!


 と。

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