『面目』

苺香

第1話『面目』

「智に働けば角が立つ情に棹させば流される」

夏目漱石の言葉がこだまする。


 あちこちでロジカルシンキングなどと謳われてはいても、所詮、企業はタテ社会であり、無理が通れば道理は引っ込む。


 いったい、どのような理屈でこんな理不尽な社会ができあがったのだろうか。

…それは、おそらくメンツの事情ではあるまいか。


 団塊世代がうっすらと消えていき、次の世代が牛耳る社会。

世代が巡るごとに世に中は良くなっていくのではなかったのだろうか。学校ではそのように教えられた気がする。


否、我々が何者かになれる時は巡ってこない。

ながくその集団に居る者はプライドという塊を抱え、後からその集団に加わった者は、その者たちのプライドをぐっしゃぐっしゃに壊す事など不可能だ…

なぜなら、そのプライドはダイヤモンドよりも固いからに他ならない。


つまり、ながく生きた者たちは、メンツが何より大切でそれらを潰される事に耐えきれず、角が立たない主張などこの世に存在しないからだ。


我々は自分自身が壊れていく道をまっすぐに進むか、理不尽に顔を背け、黙って無になるしか道はないかもしれない。


それでも、革命とはひとりひとりがやるもの。

チリも積もれば山となる。今日、削り取った相手のプライドは少し減ったかもしれない。



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『面目』 苺香 @mochabooks

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