布団から起きて誰も居ない世界のどこかで踊りだす天下無双ダンス

珍♨湯太郎

布団から起きて天下無双だと知り踊りだしたダンス

 また大好きな秘湯「大中山温泉」の夢を見た。


 ガバっと布団から起き上がり、寒さに震えながら身支度をした。


 顔を洗おうとしても水が出ない。


 テレビもエアコンも点かない。停電なのか?


 静かすぎる町。


 誰も歩いていない。


 駅に行っても電車が来ない。


 クルマが動いたので出発。


 道路には全くクルマが走っていない。信号が消えているので慎重に走ると、目指す秘湯が現れた。


 驚くべき外観の温泉施設だ。


 なんと、トラックのコンテナがすえつけてあり、「大中山温泉」とでかでかとかかれているのだ。


 端には小さく仮設浴場。ここは、廃コンテナを利用した温泉施設なのだ!


 コンテナが温泉という時点でかなり不思議な光景だか、そもそも誰も居ないことが不思議過ぎる。


 誰も居ないことがそろそろ怖くなってきたが、こういう変わった温泉は大好きなので、わくわくする。



 コンテナの脇の扉から中に入ると、左が男湯、右が女湯。


 誰も居ないが、料金箱にお金を入れる形なので、300円を投入し男湯へ。


 浴室内は、やはりコンテナの中なので、縦長の空間になっており、けっこう広く感じる。


 そこに、細長いコンクリートの浴槽が2つ並んでおり、奥の壁際の湯口から源泉が注がれている。


 自然湧出なのか、ここのお湯は出ていることにホッとした。



 やはり、ここにも誰もおらず、貸し切り状態。


 無人てもマナーは守って、手早くかけ湯して、入浴。


 手で触ってみると、左側の浴槽が温めで、右側の浴槽がやや熱め。


 手足がかじかんでいるので、まずは左側の浴槽で身体を慣らしてから、右側へ移動。冷えた指先の感覚が、じんわりと戻ってきて、すごく良い気持ち。これだから、真冬の温泉は最高だ。


 湯口に近づくと、二つの蛇口があり、冷たいままの源泉と加温した源泉をセルフで調節できるようになっている。


 前の入浴客が帰ってから間があったようで、ややぬるく感じたので、加温した源泉をドバドバ注ぐ。


 新鮮な源泉を湯口そばで浴びながら、冷泉を味見。


 「美味しい!」


 声に出してもひとり。


 そう、ひとり。


 誰も居ない世界で、何を食べて生きていけば良いのだろうか。無銭飲食?自給自足?


 僕は女湯に駆け込み、バシャバシャとお湯を飛ばしながら天下無双ダンスをし続けた。

        


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

布団から起きて誰も居ない世界のどこかで踊りだす天下無双ダンス 珍♨湯太郎 @manatarou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ