愛する人を宿した果てに…

天川裕司

愛する人を宿した果てに…

タイトル:(仮)愛する人を宿した果てに…



▼登場人物

●上木祥子(うわき しょうこ):女性。30歳。独身OL。浮気性。

●掛川(かけがわ)マモル:男性。31歳。祥子のフィアンセ。本編では「マモル」と記載。

●香田隆史(こうだ たかし):男性。31歳。祥子の会社の同僚。祥子が惚れてしまう。

●夢菜遥香(ゆめな はるか):女性。30代。祥子の欲望と理想から生まれた生霊。


▼場所設定

●祥子の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージで。;

●カクテルバー:お洒落なカクテルバーで遥香の行きつけ。

●街中:デートスポットなど一般的なイメージでOKです。


▼アイテム

●United Mind:遥香との約束を破って愛する人を傷つけた時、その本来愛すべきだった人と一心同体にさせる効果を秘めている。


NAは上木祥子でよろしくお願い致します。



イントロ〜


あなたは、愛する人を裏切ったことがありますか?

自分を愛してくれる人を裏切る…

一見そんなことありえないように思えますが、

他に好きな人ができた場合、

あるいはその好きになってくれた人が自分のタイプじゃなかった場合、

やっぱりそんな事はあるんじゃないでしょうか。

今回は、裏切りの人生を歩んでしまった

ある女性にまつわる悲惨なエピソード。



メインシナリオ〜


ト書き〈デート〉


祥子「うふふ♪マモルちゃん、私あなたと出会えて本当に幸せよ♪これからもずっと一緒にいましょうね」


マモル「ああ決まってるさ♪俺が結婚する間は祥子、お前だけだよ」


祥子「うふ♪嬉しい」


私の名前は上木祥子。

今年30歳になる独身OLだ。


でも独身で居るのももうすぐ終わりかもしれない。

私がずっと愛してきたマモルさんと一緒になれば、

幸せな結婚生活を必ず歩める!

そう思って今から本当に幸せだったのだ。


私が愛してるのは彼だけ。


ト書き〈トラブル〉


と思っていたのだが、トラブルが待っていた。

ある日、会社で大きなミスをしてしまい、

その尻拭いをしなきゃならなくなった。


でもその時に助けてくれた人がいて、

彼の名前は同僚の香田隆史さん。


隆史「もう大丈夫だよ♪あとは僕がしとくから、君はもう帰っていいよ」


祥子「あ、ありがとう…」


隆史さんは会社に入った時からとても私に優しく、

実は少し前からイイなぁなんて思ってしまっていたのだ。


(会社帰り)


祥子「ふぅ。私にはマモルちゃんがいるのに…。私って浮気症かしら…」


自分で自分が嫌になるほど、この恋心を抑えられない。


私は隆史さんに、密かに恋をしていた。


ト書き〈後日〉


それからと言うもの、いつものようにマモルと会っていても、

心の中には隆史さんの顔が浮かんできてしまい、

なんだか2人でずっと一緒にいる事のマンネリ化のせいもあって、

それまで以上にマモルと一緒にいる事が

楽しくなくなってしまった。


マモル「最近どうしたの?あんまり連絡もくれないね」


祥子「え?別にそんな事ないわよ、ちょっと仕事で忙しいから」


苦しい言い訳。

女心は移ろい易いなんて言うけど私は特別かもしれない。


それからマモルと会う度にどんどん心が離れていく形で、

マモルのほうも当然それを気にするようになった。


そしてある日、ついに喧嘩した。


祥子「もう!なんでもないって言ってるじゃない!」


マモル「ほんとかよ!?会う約束だけしていつもすっぽかすようになったし、連絡しても全然出てくれないし!…もしかして、他に好きな人でもできたんじゃねえのか!?」


祥子「そ、そんな事あるわけないじゃん!」


ちょっとドキッとした。

隆史との関係がバレたのか…と思った。


そう、あれから少しして、

私は隆史さんと男女の関係を持ってしまっていたのだ。


ト書き〈カクテルバー〉


そんなある日の会社帰り。

私はどうにもやり切れなくなってしまって

最近はずっと行ってなかった飲み屋街にでも行こうと

1人でテクテク歩いて行った。


そうして歩いていると…


祥子「あ、キレイなお店…」


全く見た事のないバーがある。

新装開店でもしたのかと思い、

私はちょっと気にいってその店に入った。

そしてカウンターについて1人で飲んでいた時…


遥香「こんばんは♪お1人ですか?もしよければご一緒しませんか?」


と1人の女性が声をかけてきた。

見ると結構キレイな人。


彼女の名前は夢菜遥香さんと言い、

都内で恋愛コーチやスピリチュアルヒーラーの仕事をしていると言う。


祥子「へぇ、ヒーラーさんなんですね」


遥香「フフ♪ええ、まぁ」


彼女は不思議な人だった。

なんか独特の魅力があるって言うか、一緒に居ると心が休まる。


それに「昔どこかで会った事がある人?」

みたいなイメージも湧いてきて、そのせいでか

私は何となく自分の事を彼女に打ち明けたくなる。


今の悩みを聞いて貰って、彼女に解決してほしい…

そんな気にさせられたのだ。


遥香「え?浮気グセ?」


祥子「え、ええw、最近自分の事をそんなふうに思っちゃうんですよ、てゆうか実際、優しい彼がいるのに、本当に浮気しちゃって…」


私は今の自分の事を全部彼女に打ち明けていた。

普通ならこんなこと絶対言わないのに、彼女になら話せてしまう、


遥香「そうですか。それは彼氏さんが聞いたら本当にがっかりするでしょうね」


祥子「…ええ。実はもうその事で喧嘩しちゃって…。ああ、私どうしたらイイんでしょう。浮気なんか絶対しちゃいけないって解ってるのにどうしても心が言う事を聞いてくれなくて…」


欲望と理性は相反するもの。

私の場合は欲望のほうが強かったのか、

愛する人を傷つけてまで自分の欲望を叶えようとしてしまう。


簡単なようで、この欲望を抑えるのは本当に難しい。


遥香「良いでしょう、分かりました。ここでこうしてお会いできたのも何かのご縁です。私が少しお力になって差し上げます」


祥子「え?」


そう言って彼女は持っていたハンドバッグの中から

1本の栄養ドリンクのような物を取り出し、

それを私に勧めてきてこう言った。


遥香「これは『United Mind』という特製の液体薬でして、その人の心に大きく作用して理性のほうをまず活性化してくれます。その上で愛する人を更に愛せるようになり、道徳から外れる行為をしようとした時、必ずその心の中に良心の声が聞こえてくるでしょう」


祥子「りょ…良心の声…?」


遥香「ええ、お父さんとお母さんの声じゃありませんよ?フフ、あなたの中に宿っている正しい心…いわゆる良心の声があなたをナビゲートしてくれ、あなたを幸せな方向へ導いてくれます。いかがです?信じるかどうかはあなた次第。もしこれまで愛してきたその人を本気で思うなら、試してみる価値はあるとは思いますが」


もう1つ、遥香さんに不思議な魅力を感じた。

それは彼女の言った事なら信じてしまうと言う事。

他の人なら信じない事でも、彼女に言われたら信じてしまう。


私はその場でその液体薬を受け取り、一気に飲み干した。


ト書き〈数日後〉


それから数日後。

その液体薬の効果が現れ始めた。


祥子「マモルぅ〜!私、あなたの事が大好きよ!もう絶対離さないでね〜」


マモル「お、おい、なんだよ急に…w」


私はそれまで以上にマモルに甘えるようになり

彼の事をもっと愛するようになって、

隆史を心の中から追い出す事に成功したようだ。


それから又いろんな所へ2人で行って、2人だけの思い出を沢山作り、

結婚まで何のトラブルもなく一直線に進もうとしていた。


もちろんマモルには、隆史との事は言ってない。

もう言う必要もないとして、その事は私の心の奥底に封印したのだ。


ト書き〈トラブル2〉


でもそれからまたトラブルがやってきてしまった。


祥子「ハァハァ、あれぇ、おかしいなぁ…。なんで私また…」


あの隆史に又、猛烈に会いたくなってしまったのだ。

体と心のほてりがどうにも消えない。


実は夜の営みについて、マモルは結構淡白でもあり、

余り私を満足させてくれなかったのだ。


その欲求不満のようなものがストレスとなって溜まってしまい、

私はまた別の男を求めてしまう。

隆史はアッチのほうは結構すごかった。


でもこれじゃいけないと思い直し…


祥子「あ、あの人なら、こんな時でも助けてくれるかも…」


そう思い、私は又あのバーへ駆け込んでいた。


ト書き〈カクテルバー〉


店に入ると、また前と同じ席で飲んでいる彼女を見つけ…


祥子「遥香さん!」


と一足飛びで彼女の元へ駆け寄り、

その時の悩みをまた改めて彼女に打ち明けていた。


遥香「おやおや、そんな事でまた悩まれてるんですか?」


祥子「ほ、ほんとに恥ずかしいんですけど、でも切実な悩みなんです…」


でもその時の彼女は…


遥香「そればかりはお助けする事はできません。あなたが自分で自分を抑え、マモルさんの事を本気で愛する自分を養い、これまでの自分がしてきた罪を悔い改めること。それ以外に方法はありませんよ?これは誰だって抱えている日常的な悩みなんです」


そう言って冷たく引き離し、

私を直接助けてくれようとはしなかった。


これが当たり前なんだろうが…


祥子「そ、そんな!あ、あの時は助けてくれたじゃないですか!」


と私は子供のように食い下がっていた。

でも彼女の答えは変わらず、

私は何とか自力でこの悩みを解決するしかない。


ト書き〈事件〉


でも結局、無理だった。


私はまた隆史と関係を持ってしまい、それだけじゃなく、

その事がマモルにもバレてしまい、マモルは…


祥子「マ…マモル…嫌ぁあぁ!!」


その事が大きな落胆になってしまったようで、

自らこの世を去ってしまった。


祥子「…ぜ、全部、私のせいだ…。マモル…マモルうぅ!」


時すでに遅し。

マモルはもう帰ってこない。


そんな悲惨な出来事があったからか

隆史まで私のもとを去ってしまい、私は独りぼっち。


当然の結果だけど、マモルをそんな形で失ってしまった私は

自分を更に苦しめ、追い込んでしまい、

もうなんにも手につかない状態になっていた。


ト書き〈遥香登場〉


そんなある夜の帰り道。

私が1人、路地裏を歩いていた時、

全く人の気配もしなかったのに

いきなり私の背後から彼女が現れた。


祥子「きゃあっ!!…え?は、遥香さん…?」


遥香「フフ、こんばんは。お仕事お疲れ様です」


恐ろしいほど冷たい目で見てきた彼女は次に…


遥香「祥子さん。あなた、私が言った事を軽く聞き流して、本来、愛すべき人を葬ってしまいましたね?それって許されない事だと思いません?」


祥子「…え?」


遥香「マモルさんがもし生きて居たら、あなたになんて言うか?どんな思いで居るか?…あなたはその彼の気持ちを正面から受け止めなければなりませんよ?」


祥子「な、なんであなたが、その事を…」


遥香「フフ、もう遅いです。あなたにはたった今から責任を取って貰いましょう。あなたが取るべき責任は、あなたを愛してくれたあの彼をずっとその体に宿す事」


そう言って彼女が指をパチンと鳴らした瞬間、私の意識は飛んでしまった。


ト書き〈祥子の自宅でオチ〉


そして次に目覚めた時、私は自分の部屋に居た。

どうも寝ていたようだ。


ベッドから起きて少しフラフラする体を支え、

洗面所に行って顔を洗おうとした時…


(顔がマモルになっている)


祥子「…え?…ぎゃあぁあぁあぁあ!!!!?」


なんと私の顔は、すっかりマモルの顔になっていた。

そして同時に、心の中に彼の声が聞こえ始める。


マモル「やぁ祥子、これでずっと俺たち一緒だね?もう浮気する事も、俺のもとから離れる事もないだろう。これからは一心同体、仲良くやって行こうな♪これが愛を交わしたカップルの、本来のあり方なんだから」


ト書き〈祥子のアパートを外から眺めながら〉


遥香「私は祥子の欲望と夢から生まれた生霊。夢のほうを叶えてあげたかったけど、欲望のほうが勝っちゃったわね。彼女は凄まじい欲望の持ち主だった」


遥香「あのとき私が勧めた液体薬は、私との約束を破って愛する人を傷つけた時、その本来愛すべきだった人と一心同体にさせる効果を秘めていたの。確かにマモルの言う通り、これが本来の、愛し合うカップルのあり方なのかもしれないわよね」


遥香「心の中から聞こえるマモルの声は、もしかするとあなたの良心の声かもしれないわ。その声をこれからはちゃんと聞いて大事にして、2人で歩むべき幸せな人生を一歩ずつ踏みしめて行きなさい」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=F-Jv-Jvgipg&t=397s

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