第2話 ピザを待つ

今日の夕飯はピザだ。

家でごろごろしていたら突然彼女が「今日の夜ごはんピザがいー」と言ったからだ。

正直冷蔵庫の余り物を消化してしまいたかったけど、どうやら僕は年上彼女に「おねがい」と甘えられることに弱いらしい。困った困った(困ってない)。



そろそろ「最近ちょっと太った?」と言われて、お腹のおにくをつままれそうなので徒歩でピザ屋へ。

道中ねこさんやいぬさんやダンゴムシさんとすれ違う。

僕はできるだけシンプルなピザが好きだけど、彼女はフルーツとかカニとか期間限定そうな具だくさんのピザが好きだ。

2人だとそんなに量も食べられないので、彼女の意見が大体通る。

僕らの家の近くには何故かピザ屋が多いが、僕は中でもピザを作っている様子が見れるこの店が好きだ。

なぜなら、ピザが出来るまでの待ち時間をピザが完成する過程を見ながら待つことが出来るからだ。



「このピザと、このピザください。飲み物はアイスティーと……この名前の長いジュースで」



彼女からのメールに「私ジュース。あ、チキンも買ってきて!」とあったので「サイドメニューのチキンも」と追加で注文する。



「かしこまりました。ではそちらでお待ちください」



いつもはこのまま、ピザを作る様子を見ながら「あれは家で作るのは難しいな…」とか「彼女に頼まれたやつ全部頼んだっけ」とか思いながら時間を潰すが、今日はそれが出来ない。

なぜなら、お客さんがピザを作る様子を見られるアクリル板?に、大量の装飾。

カラフルなたまご

前歯2本でピザの店員と同じ格好をしたうさぎ

まるでイースターだが、今は5月。うさぎはまあピザ屋の服着てるからイメージキャラクターと認識するとしても、たまごのステッカーは明らかにイースター用…

可愛かったから貼ったのかな?

彼女もよく時期外れなのに窓におばけのステッカー貼るし…

これらのステッカーが邪魔をして、ピザを作る様子が今日は見れない。



さあ、この待ち時間をどう過ごそうか。

すると彼女から再びメール。



「しりとり」



どうやらしりとりがしたいらしい。

いや、しりとりがしたいなんて甘いものではない。「しりとりしない?」とか「しりとりしようよ」とかではなく、この「しりとり」だけ送られてくる時は、しりとり強制開始のゴングとも言える。



「ノコギリザメ」



なぜ、ノコギリザメ?

まあいいや。ここで適当に「メロン」なんて答えて1ターン目の自分の番でしりとりを強制終了させた日には、拗ねた彼女の機嫌はなかなか戻らない。

ここは彼女の気まぐれなしりとりに付き合うのみ。選択肢は他にない。

どうせ待ち時間暇だしね。



「めかぶ」


「めかぶかぁ、時期になったら食べたいね。えっとー」



こういう間が空く時は攻撃を仕掛けてようと戦略を練っている時だ。



「ブーツ」


「つみれ」


「レール」


「ループ」


「プール」



「る」で終わる言葉ばっかりでの攻撃か…



この後もしばらく「る」ばっかりの攻撃に苦戦していると、僕の番号が呼ばれた。

案外しりとりに夢中になってたせいで「もう?」と驚いたけど、しりとりしてる間に10分経過してたみたい。

彼女から「パールだよ。ほら、君の番笑。「る」だよ笑」



「るん♪(ピザ受け取るから)」



と、ちょっと強引にしりとりを終わらせてピザを受け取る。

果たして彼女はしりとりの終わりが「るん♪」であったことを許してくれるだろうかと今更心配になり、足元にいたダンゴムシを手のひらにのせて「どう思う?」と尋ねてみた。



拗ねてても、ピザを食べたら機嫌直すと思います。


と言ってくれてる気がした(願望)。

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