そして、赫い

「…あっつい…。」

「冷房つけようぜ〜。」

「さんせー!扇風機だけじゃムリ!」

「…しょうがないな…。」


 そう言って僕がスイッチを押すと、すぐに皆エアコン前に集合。むしろこれはこれで暑い。

 もう6月後半にさしかかり、コウとメイもかなり慣れてきた。いや、それにしても暑いな…。


「…っていうか、最近仕事少なくありません?」

「確かにね。」

「まあ、それはそれでいいことなんだけどよ〜。」

「つまんない!」

「…こーゆーの、結構怖かったりするんだよね。一気にバッと増えそうじゃん。」

「ケイト、それフラグですよ。」

「お、薬の時間だ。」


 そう言って立ち上がる。

 ガクは毎日薬を飲んでいる。暴走しないために本部から支給されているものだ。かなり貴重なもので、割と高い…らしい。ちなみにメイは、本人曰く『ならないように加工してある』らしいので飲んでいない。

 いつも通りコップに水を溜め、棚に向かう。


「…あ?」

「ん?」

「あれ、どこやったかな…。」

「ポケットは?」

「カバンに入れたんじゃねえの?」

「メイ、アイス食べたい!」


 そういえば今日、ガクのカバンを見ていない。ガクが3階にあがり、その10秒後、あ!と大きな声が聞こえた。ドタドタとこちらに降りてくる。


「いっけねぇ!俺、ベンチに置いてきたわ!取ってくる!」

「えぇ!?僕も行く!」

「メイもー!」

「…俺は留守番してます。」


 なんだ。コウも来るかと思った。

 まあでも暑いからねー。


♢♢♢


 …なんか暑い。いや、ただただ熱いのではなく、体の底からズシっと来る暑さだ。でも少し肌寒くも感じる。やべー、なんかクラクラするな。

 あれかな。最近流行ってるとか言う、なんとかウイルス。なんだっけ…まあいいや。頭痛くて考えたくねえや。


「…はぁ…。」


 だるすぎてソファに寝っ転がる。汗かいた…けど3階まで行くのめんどいな…。

 そもそもここの街、病院どこにあるんだっけ…。っていうかそもそも、病院自体行くの何年ぶりだよ…。行き方忘れたー。


「だるいな…。」


 体と病院に行くことが。

 でも段々と眠くなっていって、気づけば俺はどこかの路地に立っていた。


「……。」


 見たことがある街だ。どこか分からないけど。街全体が赤黒くて、俺だけが色を保っている。


「コウー!」


 振り向くと、メイが走ってきていた。とりあえず受け止めておく。


「勢い強すぎなー。」

「コウ大丈夫?」


 ガクもケイトも来る。3人とも、俺と同じでいつものままだ。なんら変わりない。でも、なぜだろう。


「メイ、アイス食べたい!」

「おっ、いいなーじゃあ俺」

「ちょっと2人とも。この間食べたばっかりでしょ。」

「…あ、待って…おい…。」


 俺だけが、ついていけない。

 なんでか、足が動かなかった。


 ふとするとあいつらは消えていて、ただ俺が立っていた。

 赤黒い雨が、ただ降っていた。

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僕らの夜はまだ明けない 真白いろは @rikosyousetu36

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