第8話 こんにちは俺、久しぶり俺


 「なるほど、マスターはとんでもない存在なのですね」


 帰宅して早速と魔法で数を増やした自分はそれぞれ各自で魔法での情報共有を行いながらテストプレイを行う為の丁度いい内包世界の探索と並行しての世界の創造を行うというとんでも作業をしながら、バグやスキル、魔法に加護の開発をしているといきなり増えた俺の前でフリーズしていたリバイスが変な異音をたてながら絞り出したような苦々しい声で口にした。


 藪から棒に何なんだと思いながら様子を見てみるとやはりリバイスからして見れば魔法は所詮ファンタジー、つまりは空想で実在しないものだという認識だったのが目の前で実践される上にマスターライセンスを持つ人物が次々とウィルスみたいに増えていくのが余計に負荷を掛けていたみたいで今の今まで処理に時間が掛かっていた、らしい。

 とにかくとりあえずは納得した、というか棚に上げて何とか駆動したリバイスは無理をしながらも自身がそれぞれ収集した情報を整理し、俺へと提出する。

 リバイスに収集を頼んでいたデータは単純に言えば現在、人気のあるゲーム媒体や人気のシナリオ、名場面や操作システム等の言わば基本を作る為の情報を分かりやすいようにまとめてもらい、開発に活かそうと考えていたものだ。

 だがしかし、やはりと言うべきなのか作る、というのは難しい。

 あちらを立てればこちらが立たず、例を上げるならばやはり近接、そして遠距離攻撃の扱いだ。

 何より魔法の塩梅にどうしても苦慮してしまう。

 自身の感覚では殆ど魔法の使用には負担がないし、何より多彩でいくらでも代わりが効く利便性があるがこれをプレイヤーに重ねると途端に陳腐になるし、何よりも達成感も無く、飽きが来るのも早いだろう。

 これをスキルポイントや経験値等で自分に合わせて作り上げるから達成感があり、面白いのだ。

 しかし、自分の作るゲームもどきはどうしてもガワは自分が演じるVtuberという設定で創ってあるし、何よりもそういった才覚に肉体を創る上で多少は誤差というか才覚による差異、というのはどうしても出てしまう。

 攻撃方法に関してもそうだ。

 魔法ばかりが強いからといって多用されても困る。

 何よりも見映えは良いかも知れないがそれだけで勝てる、と言うようではなんというかバランスの悪いクソゲーとまでは言ってほしくないが崩壊ゲーである事は否めない。

 補助に関しても倍率に維持できる時間、状態異常の際の制限時間何かも調整が必要だ。

 更に言えば強過ぎる高威力の攻撃、魔法等の防御手段も必要だ。

 それにクラフトにファーム、テイム何かの育成要素も流行りにはある。 


 「…投げ出したくなってくるな。」


 そんな泣き言を呟きながらもそれぞれで色々と制作に試運転、調整を行う。

 とはいえ、最終的にはどうしても自分以外にもテストプレイしてもらう必要がある。

 自分ではどうしても一般人との目線というか感覚が違い過ぎていて、何がおかしいかが分からないのだ。


 あと2日まで来た初配信、間に合えば良いのだが…。


 クヨクヨしていても仕方ない、とにかく急いで用意したこの機材でテストプレイしてもらいながら急いで下地を揃えよう。

 とりあえず神託でもしてプレイ予定地にテコ入れしておこうか。





 最初は冗談だと思っていた。

 まるで本物みたいに感じるゲームなんて今の技術ではどうやったって何十年、いや何百年と掛かる代物だって私は考えていた。

 だから、魔法が使えるなんて胡散臭い話で入って来た彼を見た時はとうとうウチの会社も駄目かもしれないなんて呆れながら聞いていたものだ。

 しかし、少し経てばその感想を変えるほかない程、彼はこちらが思ってもみない怪しい品を作ったのだと言っては会社に持ち込み、その効能を見せてきた。

 Vのアバターに着替える(昔見た魔法少女みたいに変身なのかも)アクセサリーやよくわからない動き回るロボットに塗るだけでも明らかに違って見えるほどの凄い化粧品。

 これだけでも凄かったのだけど彼はこれを片手間で作ったのだと私たちに伝えてきた時には少し目眩がした。

 そんな彼が本腰を入れて開発したのが今、私たちが感嘆しながらプレイしているこのゲーム、仮称RFと名付けられた世界初のフルダイブ式のVRMMOだった。

 しかも、同期の1人がテストプレイヤーとして開発に参加したとはいえ、その開発人数はたったの2名と一基。

 期待と不安はあったもののどうしても気になり、彼に話して軽くプレイさせてくれないかお願いしたら発表の2日前にゲームプレイ用のゴツいヘルメット式のVR機器を人数分、会社に用意してくれた。

 道中持って帰るのは流石に恥ずかしかったがそんなことよりも興味がそれを上回った。

 帰宅すると同時に私はその好奇心のままにPCに接続してヘルメットを被った。

 それとほぼ同時に、まるで違和感どころかまるで元々そこに居たかのように気づけば電子的な空間に私は立っていた。

 驚きと興奮に支配されながらゲーム内に用意されたチュートリアルをクリアし、ゲーム内へと遂に降り立つとより衝撃的な感覚が身体中の五感を刺激した。


 まずは陽射しの温かさ、そして風の心地良い肌触りとそれにのって香る草木の匂い。

 信じられないくらいの興奮を味わいながら、近場に転送されてきた他のメンバーと合流する。

 ただ強いて言えば、キャラメイク位はさせて欲しかったな。

 そう思いながらVtuberのアバターと殆ど変わらない自キャラを見てそう思いながら。


 









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