第57話
夜明けの空が、どこか明るく見えるのは気のせいだろうか。
かつて玲は、夜の暗さを人々の思いの重なりという比喩をしていた。そして、それが夜空の暗さ=人々の総意として表すのならば、夜空から明け方にかけての暗さは、それだけ人々の思いはネガティブで悲しみが勝ってしまっているのではないかという独特の考え方に辿り着いた。
ただ、それは小説の様な独自の比喩を挟んでいるわけで、たとえ普段とは実際に明るい夜明けであろうとも気が落ちて暗く見える…といったことだってあり得る。
玲が感じる色の明るさは、心の状態に依るところがあるというこである。
だからだろうか、玲の瞳に映る夜明けの空は実際よりも明るく見えたのだろう。
「僕は、エレンとこういう関係を持ちたかったのかな。そしてそれが現実となった。心の中で引っ掛かっていたものが、静かに解けていった」
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幸せの在処は人それぞれ。そして、それらを感じるのは人の心次第。
どれほどに幸せの連鎖が起きようとも、何一つ感じぬままに時が過ぎていく人もいるだろう。
どれほどに不幸せの連鎖が起きようとも、一つ二つと何か感じながら時が過ぎていく人もいるのだろう。
そして、玲は今日も静かにカメラのレンズを夜明けに向ける。
ドロップ むーるとん @Muulton
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