第4話 彼女を作っていない男は一人だけ

 学校中において、彼女を作っていないのは自分だけ。他の男は少なくとも、二桁以上の女と交際している。彼女の数の多さゆえに、誰と付き合っているのかを把握するのは不可能だ。


 ぼっち男のところに、女落満男がやってきた。名前の通り、女を落とす(彼女にする)ことで満足感を得ている。ひどい言い方をすると、完全なる下衆である。


「比呂、彼女は作れたのか?」


「いや、まだだけど・・・・・・」


 満男は薄ら笑いを浮かべる。


「学校中で彼女0はおまえだけだぞ。そのことを恥ずかしいと思わないのか?」

  

「特になんとも思わないけど・・・・・・」


 彼女の人数を増やせば増やすほど、自由に使える時間は少なくなっていく。1カ月に一度しかデートできない彼女は、友達未満の関係といっていい。


「複数の女の子と付き合うと、いろいろと楽しいことがあるぞ。おまえも乗り遅れないように、彼女を作っていけよ」


「貴重なご意見をありがとうございます。参考にさせていただきたいと思います」


 満男は複数の彼女に呼ばれ、教室をあとにする。彼女の多さを自慢に思っているのか、天狗さながらに鼻が伸びていた。

  

 大きなあくびをしているときに、女の子に声をかけられた。


「比呂君、こんにちは」


 挨拶をしてきたのは藍沢優子。学校内において、彼氏を唯一作っていない女子生徒である。


 優子は身長168センチ、体重44キロ。バスト84、ウエスト50、ヒップ85センチで、アイドルさながらの体つきをしている。


「藍沢さん、こんにちは」


「比呂君、適当なところをぶらぶらしよう」


 1000回以上も告白を断った女性が、男を積極的に誘おうとしている。カードゲームに例えるなら、アルティメットレアクラスの珍しさだ。


「藍沢さん・・・・・・」


「いろいろなことがあって、ストレスをためているの。少しだけでいいから付き合ってほしいの」


 彼氏を作らない女の子と、一度でいいから過ごしてみたいと思っていた。誘う手間を省けたのは、とてもありがたかった。


「いいよ」


「比呂君、手をつなごう」


 藍沢さんの差し出した手を、比呂は柔らかく握った。柔らかさの中に、温かさを感じらせる掌だった。






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