第4話 天使の微笑み③

「まったく、女の子に暴力をふるうなんて本当に殺し屋は最低ですね! だいたい、途中で気付いてくださいよ。お腹を殴られたのに、私、痛がったりしなかったですよね?」


 そういえば。

「死なないだけじゃなく、痛くもないんですか?」

 何とか殺す方法はないかと考えながら、普通に会話する。


「当たり前です。痛覚は何のためにあると思ってるんですか。命の危険を知らせるためですよ? 死なないのに痛覚があっても痛いだけじゃないですか。意味ないですよ、そんなの」


「まぁ、確かに、意味はないかもしれませんけど……」

 死なないってどういうことだろう。


 心臓を失っても生きていられるってことだろうか。

 脳の損失は? 首を切り離されたら? 頭部を木っ端微塵に破壊されたら?


 それでも死なないというのだろうか。


 ……ダメだ。死なない奴なんて初めてだ。聞いてみよう。

「じゃあ、どうすれば天使は死ぬんですか?」


「はぁ……。殺し屋のくせに、そんなことも知らないんですね。しかもそれを私に聞くんですか?」

 呆れられた。


「さっき私が言ったように、死なないんですってば。天使は死なないんです」


「心臓や脳を失っても、ですか?」


「そうです。厳密には死んだみたいになりますが、待っていれば生き返ります。天使ですから」


「それは……ずるくないですか?」


「ずるくないですよ。天使ですもん。死ぬほうがおかしいですよ。というか、生死を問うのであれば、そもそも天使は生きてもいないんですけど」


「あー、じゃあ殺せないわけだ。わけです」


「驚くと敬語が抜けるんですね」

 柔和な微笑みを向けてくる。


 萌えないけど。

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