第9話 情けないロボ

 ロボのお前が言うなと言われそうだが、この街はなんとも無機質だ、まさに研究所のための街だった。とにかく白く四角い。どれも同じ建物のように見えてしまう。とにかくどこか落ち着ける場所を見つけたかった。そういえば金がない。親切なマリーさんみたいな人がいればいいのだが、今街をしばらく歩いているんだが、まだ誰ともすれ違っていなかった。人は住んでいるのだろうか?


 看板を見ると宿屋と書かれていたのでここに入ってみた。宿屋にはロボが働いており、これはロボの俺が話せば融通を利かしてもらえると思った。

「すみません、泊めてもらえませんか?」

「1泊1000ガネです」

「すみません、お金はないんですが泊めてもらえないでしょうか?」

「1泊1000ガネです」

「雑用でもなんでもしますので、泊めてくれませんか?」

「1泊1000ガネです」

「あのー?」

おかしい。コイツは最先端のツルツルボディのロボなのに機能としては旧式も旧式だ。てんで話にならない。それしか言うなとプログラムされてるみたいだった。ってことはこれを無視して勝手に泊まればいいのではないだろうか?俺は宿屋の裏にある鍵を取ろうとした。しかし、最先端のロボは俺の腕をつかみ、引きちぎろうとした。

俺は焦って手をひっこめ、宿屋を出た。


 俺はジングを左手に持ち歩き、自分の体内の違和感を感じながら誰ともすれ違わない道を歩いて歩いて・・・・・・ビリビリ、何かがショートしたかもしらない。もう動けない、ダメだ・・・・・・

「自動停止モードへ入ります」


 気が付くと、綺麗な台の上に俺は仰向けに寝ていた。停止していた俺を誰かが運んだらしい。辺りをみるとガラス越しにジングがこっちを見ていた。ジングは下を出して、俺をからかっているようだった。


 すると、突然白衣を着た眼鏡といういかにもな研究者がやって来た。

「君、面白いね」

「体調べたんですか?」

「めっちゃ魔法受けている、そして君自身も魔法を使うようだね?」

「・・・・・・」

「言わなくてもバレてるよ、君の体内は隅から隅まで調べているからね」

「あ、あの~」

「何だね?」

「魔法石を採掘するにはどこがいいですか?」

違うだろ、魔力を上げるにはどうすればいいかだろと言いたかったはずだった。

「魔法石を採掘?まぁ、この先に鉱山の街があるからそこで採掘は出来るだろうけど・・・・・・それより魔力を上げるとかしないの?」

「いやだって俺ロボですよ。魔法なんて無理だったんですよ」

俺は何を言っているんだ。魔力を上げられればもう一度アイツと戦って勝てるかもしれないんだ。魔法石を千個集める気なのか?違うだろ。なんて情けないロボなんだ俺は!

「我々は魔法が使えるロボを開発したいと常々思ってたんだよ。そしたら君がもういるとはね、しかし同時に我々の考えが間違ってなかった証拠にもなる。」

「あ、あのージング、少女は大丈夫ですか?」

「ああ、あの顔右半分変な娘か・・・・・・あれは謎だね。気にはなるけど、全く皆目見当もつかない魔力を持った生き物の卵とは思うが、あれを除去するのは無理だろうね。」

「それは何故です?」

「もはや彼女と一体化しているね。卵を傷つけるのは彼女を傷つけるのと同じということさ。脳も右半分持っていかれてしまう。」

「・・・・・・そうなんですか。ところでさっき宿屋行った時、最先端なのに知能が旧式だったのは何でですか?」

「ああ、あれはね、魔法石をロボに使おうとするとなるべく思考を少なくした方が使えると思ったのと・・・・・・これをロボの君の前で言うのはどうかとは思うが、ロボ革命あっただろ?あれをどう思っている?」

「ロボ革命ですか・・・・・・よかったとは思います」

「でもね、ロボがちょっと感情っぽいというか、なんだろうロボが人間に対する憧れが強くなっていってる気がするんだ。そもそもロボというのは我々人間が便利になる存在として作られているから、こうなると目的がそれてる気がするんだ」

「それで何か支障があるんですか?」

「限界を超えられない」

「限界を超えられない・・・・・・」

「人間は何故限界を超えられないか、感情があるからだと我々は思っている」

「だから無機質に?」

「そうだ!無駄なものは排除していかなければその先は来ないんだ。我々人間も感情をなくした方がいい」

「でもそれだと楽しくないんじゃないですか?」

「楽しいとか喜びというものは辛いや悲しいがあってこそ成り立つんだ。ではそのような感情を排除するためには結局同時に楽しいや喜びも排除することになる」

「・・・・・・」

俺はなんだか気分が悪くなった。とは言え修理してもらった訳だから感謝しないといけない・・・・・・そういえばお金はどうすればいいんだろう?

「あ、あのー修理してくれてありがとうございます。ところでお金はどうすればいいですか?」

「お金?ま、別にいいよ。色々面白いもの見せてもらったし、ただこの街に出るのはいいけどこの先雪が凄いから気を付けた方がいいよ」

「分かりました、ありがとうございます」

そう言って俺は研究所を出た。しかし、ジングが見当たらない。どこにいるんだろうジングは?

 

 すると、最先端のロボが俺に話しかけてきた。

「お、お前だなポンコツロボの、えー、トゴロって奴は?」

「そうだが、なんだお前は?」

「えーと少女、ジングは雪山に行った。」

「な、なんで!?」

「雪山今危険なのに、一人子供が飛び出した、お母さんの病気を治す薬草を探しに・・・・・・ジングは大丈夫だけど、お前は家来だから早く追いかけてこい、ウジウジしないで早く来い!だそうです」

俺は街を出て雪山へ向かった。ウジウジしていることに気づいていたのが、女って怖いなとまた新しく怖いものが俺の中で追加された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ロボに魔法 悪本不真面目(アクモトフマジメ) @saikindou0615

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画