第8話 嫌悪感を抱くロボ

 俺はこれほどまでに嫌悪感を抱いたことをなかった。俺はゆっくり降りず、そのまま魔法を解除し、落下した。その方が早いからだ。そして、黒い髪の青年をツルハシで殴ろうとしたが、青年は地面の中へ消えた。どこへ行った?


 「危ない!後ろ!」

ジングの声で後ろを振り返ったが誰もいなかった。その時背中から電撃が走った。

「わぁぁぁぁ!!」

ジングの方を見ると、ジングは怯えて声を出してなかった。つまり、あの声は青年の魔法だったようだ。俺の体がショートしそうで、色々とダメになっている部品があるのを感じた。それでも俺は、こいつを許したくなかった。


「輝け、煌めけ、光よ!」

声が聞こえる、希望に満ちた頼もしい声だ。その声に俺は従うと、全身に光を感じた。これならいける!勝てる!


 俺はそのままU字型の左手を出し光を放った。ビームだ。が、青年はそれをヒョイと上半身だけ右にそらし、あっさり避けた。しかし、それも想定内でそのまま避けられたビームをグイっと曲げ再び青年へと攻撃した。


 なんと、青年は素手でビームをキャッチしていた。そしてビームをそのままぼりぼりと食べ始めた。

「うーん、安っぽい味だ」

ニコっと笑顔を俺に向けてくる。そして青年はくるりと方向転換をし、ジングへと近づいた。待て、まだこっちはお前に要があるんだ!俺は青年へとビームをまた出したが、それを見ずに手でハエのように払いのけていた。


「やぁ、うん、ちょっと失礼。うん順調に成長しているね。」

「お、お前は!元に戻せ、私の可愛い顔を返せ!」

どうやら、いやうっすら感じていたが、この青年こそジングの顔右半分をこうした犯人だった。ますます許せない、俺はビームを放った。青年は払いのけた。


 青年がジングの顔右半分を触ると、白い石のような粘土のようなものがうねうねと動き出した。

「わー、痛い、痛い、痛い!」

ジングがものすごく痛みだした。あのうねうねとした動きはまるで生き物だった。

「もうすぐ生まれるよ、大丈夫その痛みは順調な証拠だよ」

「お、おいそれは何なんだ?お前がやったんだろ!?」

「え、卵だけど?」

「何のだ!?」

「さっき君が倒したバケモノ、僕は魔獣って呼んでるんだけど、今度はもっと強いの作るからね」

「何でそんなことをするんだ?」

「何でって・・・・・・出来るから」

「え!?」

「痛い、痛い、痛いよぉぉぉ、動かないで、わぁぁぁ!」

「出来るからやるんだ」

「こんなに苦しんでるんだぞ!」

「ロボの君にそんなこと言われるとはね、でも関係ないね」

「え!?」

「痛い、痛いよ、お願い、お願いします、どうがどべでぶだばい!」

「僕はね、みんなより魔法がちょっと出来るんだ。だから仕方がないんだよ。」

「何がだ!それで殺すのか!」

「確かにね。だから僕はもう少し僕が生きやすいようにしようとしているんだ」


 青年は馬車の方へ歩き、荷物の魔法石を1個取り出した。そして魔法石を握り溶かして、液体となったそれを一滴、舌を出して、落とし飲んだ。

「くぅぅぅぅ!効くねぇぇぇ」

血色の良かった顔があっという間に白くなり、クリアな声も少しだみ声になっていた。何やらよからぬ光景を見ている気分だった。

「何をしたんだ?」

「魔法石を飲んでいるんだ。いいよ、魔力がみなぎるというか、なんだろ魔力にムチを撃たれる、いや電撃かな、とにかく来るんだよ、良い気持ちだ快楽だ、君も試すといい、君もロボだけど、そんらそこら中の魔法使いよりかは出来るよ。だからやるといい。僕はこう見えても君を評価はしているんだよ」

「来てるだぁ?こっちは頭に来てるんだよ!!」

俺は再びビームを放った。それを青年は軽くはじいた。

「あのさ、ビームってこう撃った方がよくない?」

そういい、右手の人差し指を俺に向けて、細く鋭いビームを放った。そしてそれは俺の、ロボの心臓を貫いた。

「かぁぁぁ!」

ヤバイ、俺は死んでしまう。ロボとして終わってしまう。動かなくなってしまう、怖い、怖い。俺はまだ、ロボとして、ロボとして、まだ俺はいや魔法使いとしてもいい、家来としてでも、俺は死にたくない、死にたくない。情けないほどに死にたくない。

「大丈夫、少しそれてるから」

青年は俺を足で踏みつけながら俺を脅した。

「いいかい、君は僕に勝てないんだ。だから、方法は一つ千個の魔法石を集めろ、いいかい?僕は「エドンの森」にいるからそこでならいつでも会えるよ」

そう言って青年は地面に溶けるように消えた。


 ジングは痛さのショックで気絶していた。俺もショックで気絶したかった。俺はマリーさんからもらったローブを着て、心臓を抑えながら街へ向かった。


 確かこの先に研究所があると言っていたから、そこで俺の体修理してもらえるんじゃないだろうか。俺はとにかく怖くてこの場から去りたかった。おじさんと馬の死体はきっと同僚の誰かが拾ってくれる。俺は、とにかく修理したかった。心臓を直撃じゃないにしても、かすかに当たっていて、このままほっとく訳にはいかなかった。


 ジングはこのままにしとく訳にもいかなく、俺はU字型の左手で掴み街へ向かった。研究所がある街。もしかしたら俺を強化できるかもしれない。そんな淡い希望を抱きながら、俺は震えていた。恐怖というものにおれは支配されていたんだ。

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