第4話 殺しちゃったロボ
俺はこのままスクラップになってもいいとは思わなかった。が、声が聞こえなかった。でも俺はスクラップになりたくなかった。だから、あの大きな岩を浮かばせたときの様に魔法を使えば助かると思った。
俺は右腕を前に出し、あの声を思い出した。ピンクの光がツルハシの右腕に出て来て、その光が俺を囲んだ。もうすぐで落ちるところで、俺自身を浮かべさせ間一髪地面に激突しないで済んだ。
ここはどこだろうか?かなり深いところまで落ちた。こんなところは知らない。とても広いところで、誰かが意図的に堀ったような感じがした。辺りはやや暗いがライトを点けるほどではなかった。
周りを見ても脱出できるところはなく、上へ登るのは避けたいので無理やり掘って脱出するしかないかなと思った。目立つものといえば、台座みたいなところに積まれている魔法石の山だった。俺がそこへ近づくとやはり魔法石も俺の体も光った。光の色は赤く、なんとなく温かさを感じる。魔法石でどうにかなる訳じゃないが、どうも無視できずに俺は光ってるのを無視してズンズンと魔法石の山へと進んでいった。
そういえば、俺はあまり魔法石をじっくりと見たことがなかった。よく見ると、さっきスティーブンが採掘していた魔法石とは違うように感じる。なんだろう、こっちはさっきも感じたが温かみを感じ赤みがかっていた。吸い込まれるように俺はこの魔法石を見ていた。
「わー!」
魔法石の山の裏から突如男性が剣で斬りかかって来た。
「カンッ!」
しかし、鉄の塊99%の俺の体はそんなものでは効かず、逆に跳ね返した。
「うわー!」
しかし、それでも男性は俺の方へと斬りかかろうとする。俺はU字型の左手で剣を掴み、剣を放り投げた。
「あー!」
男性は魔法石の山を背にし、魔法石を守る体制をとっていた。
「これは俺のだ!俺のだ!」
どうやら魔法石を取られることを恐れたからの行動だったらしい。
「あ、熱い!」
男性はそう言うと急に走り出しパニック状態になった。おそらく俺と光った魔法石に触れたことが原因だと思われる。
「ふーふー。な、なんなんだお前は!?」
熱さに落ち着いた男性は俺を指差して驚いていた。男性は申し訳程度の鎧に、チョビひげを生やしていて身長も成人男性の平均より低く165㎝、体重52㎏とやせ型だった。先ほどの剣も大した剣でなく、剣士という訳ではなさそうだった。とりあえず名を聞かれたので俺は、名乗ることにした。
「自分はX-123TZ4065」
「ウィビューイン」
なんの音だ?何か魔力を感じた。
「あ、あ、あ!?」
男性が急に怯えだした。どうやら俺の背後、あるいは俺が見えてないところに何か起きてるみたいだった。俺は振り返ると、なるほど大きな獣のバケモノがこちらへ近づいて走ってくる。
「うわぁぁぁ!」
男は走った。俺はそのまま動かず、バケモノの様子をうかがった。どうやらこの魔法石は男性のものではなくアイツのものらしい。バケモノは四足歩行で見た目は動物の虎に近い。大きさは尻尾を含めて12mで体重ははっきりとは分からないがおそらく1トンは超えているだろう。通常の虎より約5倍大きく俺の身長は170㎝ぐらいしかないが、ロボの力を使えば倒せない訳ではない。俺はバケモノに近づき、暴れないようにおとなしくさせようと左腕のU字の手で掴もうとした。ところが、バケモノはすぐに危険を察知し、後ろへジャンプし避けた。中々勘がいい。後ろを見ると、いつのまにか拾った剣を向けて足をガクガクさせているチョビひげがいた。こういう焦った人間を見ると、俺は冷静になれていかにもロボらしくなれるから嬉しかった———そもそも俺はロボだからロボらしいというのは間違いである。そう俺はロボで今のは訂正を要求する。俺はロボで・・・・・・
「グベェェェ、ガー、ボッワ!!」
バケモノが口から何か丸い燃える球を吐き出した。この燃える球はどうやら魔法のようで、俺の体の中に混じってる魔法石がなんだかうずいて、痛みのような感覚だった。俺は焦りつつ左へジャンプし、避けたつもりだった。しかし、燃える球はクイっと左へと曲がり、俺に直撃した。球の大きさは俺の体全身を覆うほどの大きさで、俺は全身にくらってしまった。
「うわぁぁぁ、壊れる!壊れる!」
魔法を受けるダメージを計算できるようにプログラムされてないが、自身が魔法を使えるようになりなんとなくこの魔力の強さを理解していた。確実に俺の体はもたない計算だ。ところが、俺のうずく、痛みを与える体内の魔法石がこの燃える球の魔力を少しずつ吸収していていた。だんだんダメージ量は減り、煙は出ていてオーバーヒート状態で鉄99%の体は猛烈に熱いが、後でリセットし、しばらく眠ればなんとか直るレベルではあった。シューっと俺の体から音をたてる。今、チョビひげはどんな顔をしているか見たかったが、容赦なくバケモノがまた発射する。
「ガー、ボッワ!!」
俺はこれを打開する方法が、自分の魔力をぶつけるしかないと思っていた。その時、なんとなく山積みにされてた魔法石の方から声が聞こえた。
「メラメラボーボーファイヤー!」
子供の無邪気なその声に俺は従い、メラメラと炎を放出しようとした。俺の体は赤く光り魔法石も同様さっきよりも濃く赤く光った。俺の魔力と魔法石の魔力が一つになるように感じる。バケモノの放つ燃える球が遅く見える。体が熱い。それはさっきとは違う体内に強い魔力が、溢れてる。ダメだ溢れて止まらない。燃える、炎が全てを焼き尽くす!!
「うわぁぁぁぁぁ!!」
俺の体から炎が放たれるそれは縦横無尽に残酷に炎があちこちと焼き尽くしていく。周りが火の海だった。燃えている、バケモノは炎を浴び叫んでいる。
「グベェェェ、ギャァァァオオオン!!!」
俺は魔力がコントロールできないまま、チョビひげを探した。すると、チョビひげも炎に包まれ真っ黒こげになっていた。
「アアアア・・・・・・」
かすかに声が聞こえ、その後生命反応は停止し、塵となり風なった。俺は疲れ、そのまま倒れたがその先に出入り口を発見した。そうか、さっきの変な音はあのバケモノが魔法を使って隠された出入り口を出現させた音だったのか。俺は体が全然冷めてない状態でも、出入り口を目指しゆっくりと這いながら進んだ。何も考えられない。
「お、お父さん!?」
小さな娘が走って来た。どうやらチョビひげの娘らしい。年齢は・・・・・・しんどい、ふー。おそらく7歳くらいかな。
「お、お前が殺したんだ!お父さんをどうしてくれる!」
片方だけ涙を流しながら俺に向けてそう叫んでいた。その涙が俺の体に触れ少し俺の体は冷めたような気がした。その娘の顔右半分はなにやら不気味な石のような粘土のようなもので覆われていた。
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