第2話 眠れないロボ

 ベッドにうつ伏せになり、スティーブンの言ってた言葉が気になった。

「お前の頭は石頭かよ!」

この言葉は俺にとっては皮肉であった。いや、俺も鉄で出来ている。99%は・・・・・・


 しかし、残りの1%には魔法石が含まれている。


 今の俺は一か月前に安いボロ工場で誕生した。俺は五十年前に作られ、その時には主流の型だったんだが、今では立派に旧式で今働いている採掘場でも俺が型だけで言うと一番古いだろう。


 新しく就任した採掘場の社長はケチだったせいで、俺はいつもメンテナンスや修理してもらう工場とは別のところに預けられた。それが安いボロ工場で、こいつらは俺を見て笑っていた。人間で行ったら腰が90度ぐらい曲げたじじいがやってきたようなもんだろうか。それでも笑うのは人間としてどうだろうか。


 とにかく文句を言いながら俺のダメな部品をとにかく取れる分だけ取って、適切な部品か分からない彼らのオリジナルの質の悪い部品をつけられた。俺は居心地が悪かった。なんというか俺でない気がして非常に不愉快だとあの時の俺はそれを理屈で、こうであるからこうでこう、という実にロボらしい考えからであった。


「これじゃあ耐久力低くね?」

「ボロいからな、何せ五十年前のじじいだ」

「そういえば俺、ここ来る途中に魔法石一つ拾ったんですよ。なんか使えませんかね?」

「魔力が宿っている石か・・・・・・なんか分からんが溶かして繋ぎみたいな感じで使ってみるか、なんか分からんが」


 こいつらは、俺の機能が停止してないにも関わらず、汚い錆びた台の上に放置されている俺の前でとんでもなく無責任なことを言っていた。


「魔法石だと!?」

俺はサイエンス、つまりは科学で作られている。それを魔法というファンタジー、つまりは幻想が俺の中に入ってくる。科学とは相反するもので、少なくともロボには無用の代物で俺はロボであって人間ではなく、そもそもそれで耐久力が上がる保証もなく、そして俺はロボであって人間ではなく、科学的に解明されてない魔法という幻想を科学者であるアンタらが使うのはアンタらは科学者としての誇りはないのか、そして俺はロボであって人間ではなくロボであるんだからロボな訳でロボが・・・・・・


 ついこの間、今から一週間前のことだ。採掘場で魔法石が大量に出てきた。するとだ俺の体が光ってしまった。魔法石と共にだ。俺はごまかすために自ら備わっているライトを点けてごまかし、魔法石から離れた。俺の光はすぐ消えて安心をした。

「すみません、暗いと思いライトを点けてしまいました」

「おいおいロボとしてあるまじき行為だな、一度メンテナンスした方がいいぞ」


 魔法石を流し込まれてから俺は思うことが出来るようになった。こうであるからこうでこうという考えもするが、もっとストレートに段階を踏まずに思うということができるようになった。今となってはそれも複雑化してこんがらがってきている。元より俺は人間っぽいと言われてきたが、それを俺は無視をしていた。だって俺はロボであることを誇りに思っていた。俺以上にロボはいないと思っていた。また、思ってしまった。違う、あの時は思うことが出来なかったから、俺以上にロボはいない、なぜなら俺はロボであることを誇りに思っていたからだ。いや違う、ロボは誇りとかじゃない。えーと、俺は鉄の塊で出来て人間が俺をロボとして作ってそしてそれを俺は認めて、違う。認めるとかそうじゃなくて・・・・・・


 声が聞こえる。この声は涙が出る程心地よい。が、自分がロボから遠ざかるように思えてしかたがない。これを受け入れてしまえば、この声の導きに従えば魔法というものが使える。俺はそれを悲しいほどに心というもので理解している。魔法は理屈じゃない。この声に耳を傾けることなんだ。


 こんなことを俺は知らずして、ガタがきてボロボロになり錆びきってスクラップされるロボで終わりたかった。


 しかし、この声は何だろうか?人間だけが聞こえると思っているが、他の生き物はどうなんだろうか?もし他の生き物ならばロボである俺も生き物なのか?いやどうだろうか?俺は今生きているのか?でも心臓などのドクンドクンは聞こえやしない、確かに機械としての臓器を模した部品が俺の体を動かしている。では俺は生きているのではなくただ動いているだけだ。


 ではこの声はなんだろうか?そもそも魔法というものは本当に科学と無関係なのだろうか?科学の延長線、あるいは到達点が実は魔法ではないだろうか?人間はそれを無意識的に抽象的解釈が出来ているだけで、逆にそれを具体的には解釈していないので幻想、ファンタジーとしているだけではないだろうか?確かにこれはおかしくはある。まず人間、我々ロボの人工脳もそうだが、具体的から抽象的に解釈するのが大体である。数字を使うよりも先にりんごなどを用いたりするのがそれだ。そしてそれを感覚的に抽象的解釈できるのなら、人間がよくいう才能がある人でない限りは誰かしらこれを多少強引であっても言語化し具体的に説明ができるはずだ。じゃないとなんというか気持ち悪くなるはずだ。納得がいかない不思議な力みたいなものだからだ。現に俺もこれに恐れている。


 ただこのあらゆる生命体の中で文明を築き、支配をし、頂点として君臨している人間だけの才能として捉えてもなんら不思議ではないではないだろうか。科学というものはこの魔法を解明するまでの学問なのではないだろうか?そう考えるとこの声も、我々にも備わっている音声ガイダンス、主にアップデートして追加機能が付いた際の説明などに使用する、こいつみたいなもんではないだろうか。そうか音声ガイダンス。もしかしたら一部の人間はこの魔法を解明していて管理をし、どうしているかまでは分からないが、一人一人の意思をキャッチし、それに合わせた呪文と言う名のパスワードを受信しているのではないだろうか?なるほど人間というのは凄い。


 と俺は都合のいい解釈をし、機能停止———眠ることにした。


 俺はベッドの上で足を曲げ丸くなって眠ることにした。何故かこれが落ち着く。このような体勢がなぜ落ち着くのかは分からなくないが、それが理由だとしたらまた「俺はロボだ」と主張をし眠れなくなるので、俺は考えないことにした。


 さぁ明日は魔法石採掘だ。嫌だな。

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