誰?

あげあげぱん

第1話

 僕が住む集合住宅での話です。


 仕事から帰ってきて、まだ日は沈んでいないくらいの時間でした。一階の郵便受け。うちの郵便受けは建物の全部屋分あります。それを確認して、二階に続く階段へ向かおうと思ってたんです。


 急に、郵便受けからもっとも近い部屋の扉が開きました。急のことでしたから僕は驚いて、固まってしまったんです。


 扉は僕の方に大きく開いていて、通路を塞ぐ壁のようになっていました。扉ですから、すぐに誰かが出てきて、それは閉まると思っていたんです。そうなってから僕は通路を通ろうと考えていました。


 僕はそこに突っ立って扉の様子をうかがっていたんです。が、扉の向こうに居た誰かは、僕にこう訪ねてきました。


「誰?」


 その問いに対して、すぐに返事をすることは出来ませんでした。僕は戸惑っていたんです。その声に対してどう応えるのが分からなくて、だから動けないでいました。


「誰ですか?」


 再び、扉の向こうの誰かは僕に訪ねてきました。その声には不安のようなものが表れていたようにも思えます。若い男性の声です。


 僕は声に応えずに立っていました。ここまで十秒も経っていなかったと思います。直後、様子が大きく変わりました。


「お前誰だよ!?」


 ほとんど怒鳴る感じの声でした。僕は萎縮してしまって、まだ応えられずにいたんです。今思えば何か、なんでも良いから返事をした方が良かったのかもしれません。


 僕は、急いでその場を離れることにしました。いきなり怒鳴られて怖かったんです。


 集合住宅の階段へは大きく迂回すれば、回り込んで行けます。そうやって扉の向こうの声から離れて部屋に入ろうと考えたんです。


 足早に建物の周囲を迂回していた時、後方から怒鳴り声が聞こえました。言葉の内容は良く分からなくて、もしかしたら意味のある言葉ではなかったかもしれません。


 一瞬、僕は後ろを振り返りました。そこには細身の若い男性の姿がありました。彼は非常に起こっている様子です。彼は僕を追ってきていたのです。


 僕は急いで走りました。全力疾走です。そんな僕を男性がまだ追ってきているのか、怖くて確認することは出来ません。とにかく走って逃げたんです。


 階段を駆け上がって、部屋に逃げ込んで、しばらくは心臓が激しく動いていました。若い男性が僕を追ってきていたのかは分からず不安でしたが、誰かが部屋の前までやってくる気配はありませんでした。


 これは最近、僕の身に起きたトラブルの話です。ですが、誰の身にも突然のトラブルというものは起こり得ます。


 世の中には数えきれない程に多くの理不尽が潜んでいますから。

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誰? あげあげぱん @ageage2023

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