クリスマスは皆で過ごしたい その3
「たっだいまー!」
「おうおかえ………り……」
それなりの時間を待たされたおかげでパーティーが始まる前よりも綺麗になった部屋で動画を見ていると、ドアが開く音と共に元気な燈の声が響いた。その声に安心感を覚えつつ振り返ったのだが、目に入った燈の姿に俺は言葉を失ってしまった。
「どうどう!ボクってばかわいいよね!」
赤を基調とし、袖や腰などに白いモフモフがついている。いわゆるサンタコスというやつではあるが、燈の衣装は半袖に短パンというクリスマスとは思えない。しかもヘソ出し。
しかし、おかげで燈の腹筋や引き締まった太ももなどが強調されていてすっっごく良い。カッコ良さとかわいさの両立。まさしく燈といった感じだ。
「めっっちゃかわいい……」
「~~~ッ!!!でっしょー!」
「でもその……寒くないのか?」
「すっごい寒い!!だから暖めて~!ちょわっ!?」
いくらなんでも真冬にする格好ではない燈が俺に抱きつこうとしてきたのだが、燈の後ろにいた乃愛が燈の腕を引っ張ってそれを防いだ。
「まだ駄目だよ燈ちゃん。まずはお披露目を済ませないと」
燈を注意している乃愛はこれまたお洒落な格好だった。赤と白のサンタコスであることには変わりないが、燈よりも防寒対策がバッチリ施してある。上は長袖で、下は膝くらいまであるスカートに白いスパッツ。手袋なんかもしていて、赤のハンチング帽までかぶっている。全体的にモコモコしてる印象だ。
「……その様子だと感想を聞くまでも無さそうだね」
「すっげぇ似合ってる。かわいい」
「ぅん。ありがと」
じっくりと乃愛の姿を眺めていたのがバレた俺はちゃんと乃愛にも感想を伝えた。それにしても2人ともクオリティが高い。そんじょそこらに売っているコスプレグッズではないだろう。まさかとは思っていたが………
「お気づきのようだね零央くん!」
「やっぱり七海の……うぉっ」
自信に満ち溢れた七海の声色から自作であることを確信し、ドヤ顔しながら現れた七海に目をやると、あまりの破壊力に俺は気持ち悪いリアクションを取ってしまった。
「私が作りました!」
当然七海もサンタコスをしている。大体は乃愛と一緒なのだが決定的に違うのはやはりその胸元。少しサイズを小さめに作ったのかどうなのかは知らないが、服が浮き上がって見事なカーテンを作っていた。黒くてピッチリとした肌着を着ているのでヘソ出しとは言わないがこれはこれで趣がある。そして胸のど真ん中を縦断するように付けられた首元まであるファスナー。自作だからと自分用だけやりたい放題だ。
「…………そんなに見られたら流石に恥ずかしいんだけど」
「あ、悪い………えっと……似合ってるよ」
「もぅ調子良いんだから。さ、次々」
七海はそんなことよりと後ろにいた人物に手招きした。その人物はおどおどしながら前に出てくると、恥ずかしさと申し訳なさが混じったような顔でゆっくりと顔をあげた。
「こんなの………久しぶりすぎて……もうおばさんなのに……」
「どう?薫さんは魔女風に仕上げてみました」
その紹介の通り赤面している薫は他の彼女達とは違って上下が一緒になっているドレスのようになっていた。くるぶしの上くらいまであるスカートにいかにも魔女ですと言わんばかりの帽子。けれど全体的に赤くて首元や袖に白いモコモコがついているのでサンタコスなのは分かりやすかった。
「うぅ……あんまり見ないで零央くん…」
「大丈夫。綺麗だよ薫」
「あぅっ…………」
「だからお母さんはいちいち照れないでって言ってるじゃん」
彼女の中で一番うぶな反応を見せる薫に呆れながら今度は桜がやってきた。魔女モチーフというだけあって大人な雰囲気の薫とは対照的に、桜は日曜日の朝にやっているような魔法少女みたいなコスだった。膝上くらいのフリルのミニスカートに、桜の頭と比べれば少し大きめのフード。
「………ん」
「うん似合ってる。かわいい」
「んっ…………そ」
褒めろという無言の圧力を感じた俺は桜にも感想をのべた。すると桜はフードをより深く被り、赤くなっていた顔を隠しながら頷くのだった。
「…………あれ?栞は?」
「あー……それなんだけどねぇ」
桜まで見終わり、栞の姿がないことに気づく。それを七海に尋ねると、七海は隣の部屋を見ながら「直接行った方が早いかも?」と俺に促してきた。
その言葉通りに俺が隣の桜達の部屋に行くと、部屋の中でクルクルと回っていた栞がいた。
「なっ………なんでこっちに来たんだ!?」
「いや…七海がその方が早いって……」
「七海めぇ……!」
珍しく七海に対して本気目の怒りを抱いている栞。栞だけ来てないのは何事かと思ったが、栞が着ている衣装を見ればなんとなく理由は察せれた。
「…………俺は好きだよ。似合ってるし」
「いやっ…違うぞ!?私はもっとカッコいいのを頼んでいたんだ!これは七海の罠だ!」
栞の格好は一言で表すならエロい。太ももの真ん中辺りまでしかないピッチピチのタイトスカートに肩と鎖骨をさらけ出している服。栞には申し訳ないが照れてるのが更に良い。これは栞にしか出せない魅力だろう。流石は七海。やっぱアイツは天才だ。
「こんなのっ…………少し動けば見えるじゃないか………」
「見えるって……今更だろ?」
「そうじゃなくてっ……その………下も……七海から渡されたやつを着けてて……その………細いというかっ…なんというか…」
「…………なんで着たんだよ」
「仕方ないだろ!?七海が必要だっていうから!」
栞は騙されやすいところはまるで変わってない。まぁ七海の言葉だったというのも大きいだろうが、将来が心配になってきた。
「とりあえず……あっち行くか」
「くっ……なんでこんな辱しめを……!」
恥ずかしすぎてもはや半泣きになりつつあった栞を連れて俺の部屋に戻った。その後は全員でのプレゼント交換会や、トランプ大会などを経て段々と25日が終わりに近づいてきていた。
そんな中、急に乃愛が立ち上がって皆に確認を取り始めた。
「明日の予定がある人!」
「はい!午後から部活です!」
「あ、私も午後からパートが……」
「よし頑張って!じゃあ燈ちゃんと薫さん以外は無いね!」
知っていたはずの確認を一応取り、全員が午前中に予定がないと分かると乃愛はニヤニヤしながら俺の後ろに回り込んで抱きついてきた。
「まだまだクリスマスはこれからだぞ~」
「まぁそうなるよなぁ……あ、そういや言ってなかった」
サワサワと人の体をまさぐってくる乃愛からクリスマスという単語を出され、あの言葉を言ってなかったことに気づく。遅いかもしれないが本番はこれからということなので問題はないだろう。
「今更だけど……メリークリスマス」
こうして6人のサンタに囲まれたクリスマスは日を跨いでも続き、この幸せな時間を思う存分満喫したのだった。
【本編完結】NTR系エロゲの最強竿役に転生したので、主人公の代わりにヒロイン達の破滅フラグをへし折ってやります @HaLu_
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