第100話 オッサン齢53歳にして決着をつける。

 火柱が消える。

「これは分かってたよ」

 無傷の俺があらわれた。


「流石にコレでは貴方を倒せないわね」

 危なかった、ギリギリスーパーアーマー間に合った。

 若干尻が痛いから、ギリギリ間に合ってなかったまである。


 来ると分かってても、スーパーアーマーもそれほど長い事展開出来ないから、怖かったぁぁぁ!


 とはいえ、ここはポーカーフェイスで余裕見せておかないとな。


「時間稼いでいたのはそっちばかりじゃ無いんすよ『酩酊饗宴、酒池肉林』」

 笹かまが何処からか出して来た徳利とお猪口に酒を注ぐ。


「な、なんだこれるぁ…」

 氷妃メンバーの呂律が回らなくなり始める。


 なんでも、酒を触媒とした笹かまのとっておきの技らしいが、とにかく発動までに時間がかかるそうだ。


 お猪口に注いだ酒がそのまま霧のようになって氷妃達に降り注ぐ。


「全員強制的に酔っ払ってもらうっす」

「残念だけど、こういった毒に分類されるものは私には効かないわ」

 周りがフラフラになっていく中、氷妃だけは毅然ととして立っている。


「お嬢!好きだあ!」

 突然、タンクの男が氷妃に抱きついた。

「ちょっ!お前は何をしてるの!離しなさい!離しなさい!」


「この酒で酔っ払うと、色々タガが外れやすくなるっす」

 笹かまは、そう話ながら、真っ先に回復役を気絶させる。


「貴様…ひひょうらぞ」

 大剣持ちも呂律が回ってない。


「こういうクラスなんすよ、すいませんねっ!」

 大剣持ちの後頭部を思いっきり警棒で叩きつける。


「ク、クソ…ガァァァ!」

 スキルで攻撃しようとして来た烈火に俺はメイスを叩きつける。


 装備の効果で自分が回復していくのが分かる。

 そして回復した分烈火にダメージが入り、烈火が動かなくなる。


『氷盾!氷茨!』

 さすがランキング1位の氷妃だ!単純な後衛の魔法職ではなく接近戦でもしっかり対応してくる。

 笹かまの攻撃を氷の盾で防ぎ、俺に対して氷の荊棘を鞭のように扱い攻撃する。


「ブロック!」

 氷の荊棘を盾で防ぎながら、氷妃に接近していく。


 笹かまは標的をタンクに変える。

 酔っていてもタフなだけに、即座に行動不能に出来ないようだ。


『氷茨乱舞』

 そこら中から氷の荊棘が飛び出して来た。


『スーパーアーマー』

 このスキルを使ったというより、使わされた感触が強い。


 だが!

 ここまで接近したのなら、後は強引にこっちの射程圏内に入るまで進むだけだ。


「くっ、『百花氷乱』」

 氷妃の周りを巨大な氷の結晶が花びらのように舞う。


 この結晶ひとつひとつが必殺の氷の爆弾だ。

 触れた瞬間、大ダメージと凍結で相手を死に至らしめる。


 氷妃のとっておきである。


 対人では無敵の魔法だ。


 それを俺はスーパーアーマーで強引に突き進むという、力技でねじ伏せる。


 ダメージは入らなくても凍結は俺の身体を蝕む。


「来ないで!来ないで!」


 氷妃の手から氷の礫が打ち出される。


「うぉぉぉぉ!『メダイストライク』」


「キャァァァァ!」

 氷妃が俺の一撃で倒れた。


「え?あれ?生きてる?」

 崩れ落ちた氷妃が、ポカンとしていた。


 放心している隙に笹かまが氷妃も拘束する。

 他のメンバーも拘束済みだ。


「え?え?どうして?」


「…」

 恥ずかしくて、直視出来ねぇ。


 おもむろにアプリを操作し、氷妃に見せた。


 パーソナルスキル 堪忍

         HP50%以下の時に発動、戦闘中敵に攻撃した時にHPを32回復


「村重さんのモンスター倒した時にレベルアップしてしまってな、HP回復しすぎて全然ダメージ入らなくなってたんだ」


「いやービビったっす!1番大切な場面でいきなりポンコツになるんすもん!

 しょうがないから俺もとっておき出したっすよ!」


「ハッタリだけでなんとかしないとならないから、もう、そっちの思い込み利用するしか手がなくてな」


「はは、なんか気が抜けたわ…どうするの?どっちみち私たちを生かしたままにはいかないわよ。

 殺してしまわないと、今度はもっと入念に準備して、もっと大規模に行動されるわよ。

 あの人はここに自分の王国を作りたいんだから、誰もが傅く自分だけの世界をね」


「それなんだが、死んだ事にして潜伏する事は出来ないか?」


「何処に?」


「俺たちが潜っている赤平のダンジョンは俺たちくらいしか来ないから、誤魔化せると思うんだ」

 そう言いながら笹かまを見つめる。


「…俺がめっちゃ面倒くさい事になるんすけど…やってやれ無いことはないっす。

 そういう事は誰かに話す前に相談して欲しいっすけどね!」


「信頼の証だよ」

「嘘つけー!今思いついただけっすよね!」


 こいつ、鋭いな。


「ただし、そうなるなら今度は完全にこっち側になってもらうっすよ!

 洗脳されてないか調べなきゃならないし、この際篠塚さんも巻き込んでやるっす!」


「分かったわ、全部そっちのいう通りにするわ、こう見えて臆病だって言ったら信じてくれるかしら?

 死ぬのがすごく怖いのよ」


「韋駄天も口裏合わせてもらうっすからね!」

「あぁ、分かった」


 問題を先送りしただけな気もするが、ひとまずは大団円…で、いいのかな?


【後書き】

 これにて2章完結とさせていただきます。

 ちょっと次のプロットがまとまらないので、一旦完結にして、話がある程度まとまったら続き書きます。

 その時は新作として発表すると思うので、ぜひ作者フォローしてください。

 気長に待っててくださいね。


 お読み頂き、ありがとうございます。

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【HJ大賞5二次選考突破作品】オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】 山親爺大将 @yamaoyajitaisho

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