はじまり

鬱蒼とした森の中を矢が、火の玉が飛ぶ。獲物を仕留めんと殺意が吹き荒れる。

逃亡者は1組の獣人とエルフの男女、対し追跡者は獣人とエルフの混成部隊。

幸いなことに逃亡者は実力があるらしく、矢を躱し、火の玉を相殺する。

混成部隊が連携を取れていないことも逃亡の助けになっている。

だがしかし、多勢に無勢、長い時間をかけ削り取るように消耗させられていた。

ましてやその懐に赤子を抱いていれば結果は火を見るよりも明らかだろう。


「………あいつが待ってる、行け。俺はもうここで良い」


いよいよ諦めがついたのか獣人の男が立ち止まる。

いや違うその目は未だに燃えるように輝いている。

男は剣を構え、周囲を睨む。命を擲った足止めだ。

追手が男に追いつく。


「殿下、今ならまだ間に合うやもしれません。投降していただけますよう。」


追手は返答にはなから期待などしていないのだ。面倒くさそうに儀礼的に勧告をする。


「貴方は耳長なぞと交わる大罪を犯しました。父王も赦しはしないでしょうが、命だけは助かりましょう」


男は笑う。


「問答無用!!」


その瞬間殺意が爆発した。






エルフの女は果たして逃げ切れたのだろう。

女は奇妙な剣を持った男と話をしていた。


「この子をお願いします。強い子にしてあげてください。誰にも負けぬよう、あらゆる苦難を乗り越えれるよう。」


女は明らかな疲労の色を浮かべ、喘ぎながらも赤子を男に渡した。だが男は受け取ったものの訝しんで聞く。


「エメラ、お前は来ないのか?この子の母親だろう」


女は背を向けながら杖を片手に言う。


「追手が予想よりも多い、撹乱のため戻って戦います。既にヴォルフも足止めのため動いています。」


「………そうか。いいんだな、俺はこの子に俺の剣を継がせるぞ、修羅の剣を。」


女は木になった果実をその魔力をもって、赤子の形に成形しながら言う。


「構いません。私と彼の血を継ぐのです。きっと惑わされず強い子になるでしょう。」


男は舌打ちをして、頭を掻く。


「そうかよ、いいぜ。じゃあな、次会う時は冥府の底の牢か。」


「はい、それではこれで。あとは頼みました。ディル」


女は戦いに赴く。男は去る。赤子はその腕の中で安らかに眠り続け、そして本来介在するはずのない種子は静かに覚醒の時を待つ。










—————誰かが言った。

「ま、こんなものか」



—————————————————————

こっからは後書きです。

後書きの前にある横線ってこれでいいんですか?教えて偉い人!


あと一応ヴォルフ、エメラ、ディルは愛称で本名はヴォルフガングとエメラルダス、ディルムッドです。史実の人名と私の好きな漫画の登場人物、ケルト神話の登場人物から取りました。


私は学生で今すこーし忙しいです。投稿が滞ったらすみません。というか滞ります。

でもエタらず、ちゃんと終わらせてあげたいな。

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ハッピーエンドへの道 名状しがたき林 @smallbamboo

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