ハッピーエンドへの道

名状しがたき林

バッドエンド

死のうとしていた。


理由は特にない。


ただ何となくの未来への不安とか家族への失望が煮詰まって、衝動的に行動しただけだった。


父が母をなじっているのが聞こえる。


思えばあの男に与えられたものは料理の知識だけだった。俺に与えられたものの大半は母によるものだ。


今生の終わりの際になっても、なぜ母があの男と結婚したのか理解できない。なぜあの男が家族に対して金を費やさないのか理解できない。


後は椅子を倒すだけだ。


首に対して衝撃が走る。痛みと息苦しさを感じる。その瞬間それまでの思考を押し流す強烈な感情が生まれた。


死にたくない


「―――――」


吐き出した息は言葉を紡がない。暴れるも椅子は既に倒れている。


息が。 嫌だ。 こわい。 いたい。 おかあさん しにたくない おかあさん


母に声は聞こえない。


父が母をなじっているのが聞こえる。


しにたくない しにたく.........


今度こそ、もっとましな死に方を...

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