書架《Missing他》
卯月
書架《Missing他》
もう人に非ざる者が人恋うる桜の森の満開の下
絶対に人を憎むな目に見えぬ犬が目覚めて騒がぬように
削られた鏡に映る梨の実を採りに行こうか首くくろうか
可哀想なベッドの下の子供たち蒼い月夜に還っておいで
先輩がまだ見えないよ ぷつり、ぷつ瞳の中に
蜘蛛の糸を細く紡いで釣り上げる瞳の奥の美しい罪
スプーンで
森の奥もう戻れない魔女がいてお菓子の家はとても淋しい
しゃぼん玉こわれて消えて海の果てあなたはずっと生きてください
狼のお腹じょきじょき切り裂いて石を積むのはごまかしの罪
雌鶏は金の卵を産めなくて雛はその手を真紅に染める
教室の棺に花を閉じ込めて王子の名前は誰も知らない
誰ひとり王女を見ない城のなか誰もいらない幸せの墓
箱のなか妬み怨みを詰め込んで家という名の孤独な蠱毒
脳内を這いずりまわる虫の声穢れを寄せて送られて
流し雛
学校は微小な地獄 ひび割れたスマートフォンと汚水の臭い
友達を同じ低さへ引き戻しわたしたちずっと友達だよね
からっぽのわたしの前にぶら下がる中身などない真っ赤な袋
昔から子は七つまで神のうち
書架《Missing他》 卯月 @auduki
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